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[コメント] REVOLUTION+1(2022/日)

物語は現実の銃撃犯の生来をたどる主人公(タモト清嵐)のモノローグによって進行する。若松プロにルーツを持つ製作陣らしい低予算、短期間制作の常套手段だが、この実直な語り口が題材の"生々しさ"と相まって疑似ドキュメンタリー的な迫真性を作り出している。
ぽんしゅう

現実をなぞるパートに付け加えられる創作パートの肝を担うのは若い宗教2世(森山みつき)、中年の革命家2世(イザベル矢野)、そして銃撃犯の妹(前迫莉亜)の三人の女性だ。若い宗教2世の女は主人公の心身の癒しを試み、革命家の子供として育った女(足立正生の自戒が滲む)は主人公の決意に理解を示しつつも、どこかシラケ気味で意志を共有することはない。最も重要な役を担うのは妹だ。事件後をひとりで生きなければならない彼女の決意表明は、彼女と同じように安倍銃撃によって露呈した問題後の社会を生きる者たちへ向けた脚本担当の井上淳一足立正生の意志表明であり、その未来志向に私は共感できた。

ふたつのことを思った。この事件後、新聞やテレビといった大手メディアは、模倣犯の出現や凶行の正当化の警戒を口実に安倍晋三と銃撃実行犯(山上徹也)の関係に深入りすることをさけ、旧統一教会と自民党の関係や宗教2世の救済問題の追及に終始した。確かにテレビワイドショーの迎合体質や世間の事件リテラシーの脆弱さを考えれば賢明だったかもしれない。そんななかで、この映画は「安倍晋三と山上徹也」の関係問題に唯一正面から"意思表明"をしたメディアではないだろうか。新聞やテレビにはできないが映画ならできること。その意志の貫徹は、とても意義深いことだと思う。これがひとつ目。

ふたつ目。事件直後、山上徹也に対する批判に、マザーコンプレックスによる逆恨み的犯行を指摘する意見を目にした。彼の生い立ちと母親との関係を思えばマザコンはさもありなんな精神性であり、同情に値しても非難や批判されるものではないと私は思った。この映画では母親に対峙する主人公の周りに、先ほどふれた3人の女性が配置されている。この構図に、私は作者たちが込めたマチズモの限界とその無力さの指摘を感じました。そういえば『夜明けまでバス停で』でも日本社会の将来を託されたのは、知らぬ間に自己責任社会を押し付けられた"アラフォー女性"だったのを思い出しました。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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