[コメント] PERFECT DAYS(2023/日=独)
映画を見終った人むけのレビューです。
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近所の映画館が「この町を舞台にした映画ですよ!区民割引もありますよ!」とさかんに宣伝していたので、夫とふたり見に行った。宣伝にいつわりはなく本当にご近所映画だった。よく知っている景色や店が出てくる映画ってこんなにウキウキするものなんだなあと感動し、柴又のひとはいつもこんな感じで寅さん映画を見ていたのだろうか?と思った。
また、『花束みたいな恋をした』で語られる音楽や本には今ひとつピンと来なかっただろう夫(彼は見てないだろうからあくまで私の想像だけど!)も、この映画でかかる音楽やとりあげられる本にはなじみがあったため嬉しそうだった。私も嬉しかった。
パティスミスに興味を示してくれる今時のお嬢さんなんて幻想を実写で見せてくれてヴェンダースありがとう!と思った。私もあんな子と出会いたい。一緒にレドンドビーチの話をしてこぶしを突き上げながらグローリアを歌いたい。エイントイットストレンジを静かに聴きながら泣いて、えへへって笑いあいたい。普段は先方に合わせてニュージーンズの話題に相槌打ってるけど、本当はね、パティのほうが百万倍好きなんだよ。本だってね、宇佐見りんなんかもよいけど、文庫化にともなう「百年の孤独」の再ブームにこそ心がふるえるんだよ。
なので、もともとよいおうちのボンで、そのままずっと好きなもの…若いころに出会った好きなものばかりに囲まれながら世間からも時間からもほどよく距離を置いて生きてるこの主人公がちょっとうらやましくもあった。『花束みたいな恋をした』の菅田くんには選べなかった人生。選ぶにはそれはそれで勇気のいる完璧な人生。パーフェクトな日々。こもれびのロマンチシズムとこころもとなさに満ちた、はかなくて美しい映画。
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ところで余談ですが、これまた地元ドラマというふれこみの『錦糸町パラダイス』というドラマの初回を見たら、この映画では後輩役の柄本時生がプロデュースしててね。で、お掃除やさんとして錦糸町から渋谷までお仕事しに車で出かけて行ってるんですよ! タイトルが『洲崎パラダイス』に似てるのもちょっと気になるけど(洲崎の現在地と錦糸町はおとなりと言っても過言じゃないくらい近い)、この設定はあまりにもこの映画とかぶっているのでは?と思いました。柄本時生はたぶん、撮影に参加しながら構想を練っていたのじゃないかなあって。
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