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[コメント] ピカソ 天才の秘密(1956/仏)

「おぉ・・・ナニぃ?・・・そーくるか!」 まさにその連続。唖然としながら見ているこちらの顔は、さぞかしマヌケ面かと。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







白紙の上に線や点が生まれて、しばらくすると何かが見えてきたトコロへ、さらに筆が全く予測のつかない動きを見せる。こちらの想像できる範囲を軽々とインクで塗りつぶし、その上に新たな均衡をかたち作っていく。

さらには折り重なった直線と曲線からなる画においては、過程を紐解くことで、そこには確かに幹が存在し、そこから枝葉が生まれていっているのが、とても分かりやすく示されている。

さらにここまでを上っ面とことわった上で、「本質を見せよう」と油彩に移る。ここでは描いては消し、塗りつぶし、といった過程を見ることで、より赤裸々な試行錯誤に立ち会うことができる。それによって、一つのキャンバスの上にどれだけのものが塗り込められているのかが分かる(少なくとも分かったような気になる)。

そして映画が終わる頃に本人がふたたび登場し、この映画に署名を残して去っていく。謎めいた微笑みを残しつつ。結局この天才の秘密が少しだけ分かった気になりつつも、やっぱり表層の裏側にあるものなど具体的に分かるワケではない。常人の想像で補えるものなんて、タカが知れている。「あくまでこの映画も私の作品です」とでも言いたげな署名といたずらっぽい笑み。いやはや、何ともしたたかな・・・。

とりあえずピカソの作品に慣れ親しんでなくても、予測のつかない点と線の動きを固唾を飲んで見守ってるだけでも、ひたすら楽しい。天才の創作の過程に立ち会う。何ともコレはスリリングな映画。天才の謎(ミステリー)をめぐる一種のサスペンスと言ってしまってもいいかもしれない(タイムリミットのシーンでの手に汗握る演出なんて如実。まさにジョルジュ・クルーゾー)。

(2002/12/20)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] Ribot[*]

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