[コメント] ショーイング・アップ(2022/米)
彫像(塑像)を作るミシェル・ウィリアムズ。個展に向けて準備中、云わば、ラストスパートという状況だ。ウィリアムズに対抗する相手役、ホン・チャウの登場はタイヤを転がすシーン。道を左へ横移動。いいタイヤが手に入ったと云いロープで木に吊るす。ホン・チャウも芸術家だが、ウィリアムズの大家さんでもある。ウィリアムズは給湯器の故障修理を早くしてとホン・チャウに頼む。横移動に関しては、美術学校で、デッサンをしたり、彫刻を作る学生たちをとらえた横移動も心地よいショットだ。
また、本作は猫の映画であり、鳩の映画と云ってもいいだろう。ウィリアムズの飼い猫が、鳩に怪我をさせ、それを知らずに、怪我した鳩の治療をするホン・チャウ。テープで羽を巻かれ、箱に入れられた鳩がウィリアムズとホン・チャウの間を行ったり来たりする。全体、多くの登場人物が織りなす群像劇である点や、フリー・スピリットな人たちの雰囲気、猫の扱い含めて、ロバート・アルトマンを想起させられる。
ウィリアムズの母親−メアリーアン・プランケットは美術学校の管理職。父親はジャド・ハーシュで、引退した陶芸家。娘のウィリアムズが父親の家を訪ねると、知らない男女の旅行者がソファで寝ていたりする(女性はアマンダ・プラマーだ)。そして、兄は『ファースト・カウ』では主人公を演じたジョン・マガロ。彼も芸術家のようだが、かなりおかしな人なのだ。
本作は、個展に向けた制作のみならず、鳩の件や、家族の問題など、様々な心労を抱えて終始しかめっ面のウィリアムズを見せられる映画でもあるが、単に顔演技だけでなく、歩き方など全身で感情を体現しているウィリアムズの画面を楽しむ映画と云えるだろう。
終盤、給湯器の修理に関して、ホン・チャウを怒鳴り、花壇の花をむしるウィリアムズにもくすぐられるが、その後のクライマックス、個展のシーケンスは圧巻だ。お父さん−ハーシュが娘の作品を見つめる画面に感動するし、兄のマガロがリフレッシュメントのチーズばかり食べるというのが可笑しい。そして、ホン・チャウが鳩の箱を持って来て窓際に置く。こゝから子供2人が鳩のテーピングを外し始めるのが実にスリリングなのだ。やはり、ラストは、ウィリアムズとホン・チャウに収斂するが、その描写もいい。ラストカットがクレーン俯瞰(多分)のロングショットというのは定番だが、実に落ち着きがいい。
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