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[コメント] サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020/スペイン=米=伊)

ウディ・アレンの映画祭。高度な自虐ネタ。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







毎度毎度同じような話を手を変え品を変え作るウディ・アレンですが、元々、いろいろな映画の影響を受けていることは分かっていたんですよね。換骨奪胎した本歌取り的な。最近観返して気付いたのですが、『アニー・ホール』は、すごーくよくしゃべる『男と女』だと思うんです。

しかし、まさかこんなに正面切ったパロディーをぶっ込んでくるとは思わなんだ。

(以下、備忘録)

オーソン・ウェルズ『市民ケーン』、フェリーニ『8 1/2』、トリュフォー『突然炎のごとく』、クロード・ルルーシュ『男と女』、ゴダール『勝手にしやがれ』、ブニュエル『皆殺しの天使』、ベルイマン『仮面/ペルソナ』『野いちご』『第七の封印

(備忘録、以上)

フェリーニはちゃんとデブ女が出てくるし、ブニュエルはちゃんと脚フェチだし、『第七の封印』の死神なんか健康アドバイスしてくれんだぜ(笑)

これはサン・セバスチャン映画祭を舞台にしたウディ・アレンの「映画祭」だったのです。

そしてこの作品は、ウディ・アレンが主人公の小説家に自己投影し、その言動を通して自身の心情を自虐ネタ的に吐露している映画です。いろいろあってアメリカから干されている彼が、アメリカ(大衆娯楽文化)に毒づきながら、ニューヨークへの未練はタラタラで、「高尚な趣味を気取った俗人だった」と反省するのです。

もっと要約すれば、いろいろあったウディ・アレンが、自分の存在意義を振り返る映画でもあるのです。

その結果、彼は気付いたのです。「(自分は)小説家ではなく読者だった」という劇中の台詞同様、「自分は映画監督ではなく、一人の映画ファンだった」と。それが上述の映画パロディ。まあ、アメリカを干されたのをいいことに、ここぞとばかりにアメリカ人には分からないネタをぶっ込んだのかもしれませんけどね。ほら、ウディ・アレンは「高尚な趣味を気取った嫌な奴」だから。「書いては破る」小説家は、「映画を作り続けてきたが、まだ満足いく作品を生み出せていない」という心情吐露なのかもしれません。

ただまあ、ウディ・アレンと40年近く付き合っていますから、プライベートの好調/不調と、作品の出来/不出来がリンクしてるのが分かるんですよ。

この作品を観る限り、今、不調(笑)。

(2024.01.21 恵比寿ガーデンシネマにて鑑賞)

(評価:★3)

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