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[コメント] ミッシング(2024/日)

本作もほとんどハンディカメラの画面。固定ショットは僅少だ(自動車の中のカットでは多かった)。劇中、記者の中村倫也とコンビを組むテレビカメラマン−細川岳のカメラは三脚に載せられている場面も多いというのに。
ゑぎ

 しかし、ケレンもないが、奇をてらわない素直な撮影で終始し、嫌味な繋ぎも少なく、この監督も不真面目にやれば、これぐらいの佳編を撮ることができるのだと思わせられた。

 それに、このような題材にも関わらず、意外とクスぐられる場面が多いのも、本作の良いところだろう。例えば、ビラ配りの取材中に石原さとみと中村がモメる後方で、地面に落ちた(風に転がる)ビラの絵を撮ろうとしている細川のショット。あるいは、石原への半年節目のロングインタビュー中、「なんでもないようなことが幸せだった」というフレーズについ一言ツッコむ細川。前半の細川は、いい味を出しており、彼に関しては、ワタクシ的には『佐々木、イン、マイマイン』以来のスマッシュヒットだ。

 他にも、叱られて泣く小野花梨に、鼻水が沢山出るね、と云う中村。あるいは、随所に表出する石原のヤンチャぶり(劇中では、元ヤンと指摘される)、石原の弟−森優作の部屋の前での暴言や、弟への怒りのLINEメッセージなんかも思わずニヤけてしまったのだ。

 主要な人物に関して云うと、勿論、石原のファイトに言及すべきだと思うが、それは他の方々に任せておくとして、夫の青木崇高の抑えた演技も良かったし、弟役の森優作が実に適役だったと思う。

 ただし、後半、未整理に思えるシーンが目立ったのは、少々減点要素になる。例えば、中村の後輩記者の仕事ぶりや出世に関するプロットは、必要だったのだろうか。中村の事件に対するスタンスや、置かれた状況を補完する効果は認めるが、私はノイズにも感じる。同じように、唇をブルブル振るわせる所作の反復も効果的だと思わないし、全体、エピローグ的な最終盤で通俗的に堕したと思った。

 ラスト近くの、壁の落書きの跡に虹のような光がさし、石原が手をかざす演出も綺麗にまとめ過ぎてありきたりに感じる。石原を助手席に乗せて森が運転する自動車が、側道に停まって会話するシーンの後の、自動車のロングショットで唐突に暗転、ぐらいのエンディングだった方が、力があったと思うのだが。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

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