[コメント] 違国日記(2024/日)
実は、序盤は特に、ありきたり且つ落ち着かない繋ぎだと感じた。開巻のアサ−早瀬憩のフォーカスイン処理から手に持ったソフトクリームが落下するまでのカット割り。病院でアサが初めて叔母マキオ−新垣結衣と会うシーンの真横から新垣を撮った切り返しの繋ぎなど。あるいは、真っ暗な中に独りぼっちのアサのイメージ挿入(これの2連打)も凡庸な選択に思える。ただし、葬儀場面で、盥という漢字についてアサが呟いた後(これらワザとらしい点は原作そのまゝと推測する)、マキオが、うちに来ればいい、ときっぱり云う場面は、正面アップの切り返しで、この撮影と編集には心動かされる。
また、故人の声が聞こえたり、一瞬姿が見えたりといった、スピリチュアルな描写についも、思わせぶりなだけで中途半端だと思うし、さらに、アサが書き始める日記と、彼女が高校を卒業する際に開示するべく書き始められたノートという2つの紙媒体の扱いも、もっと鮮やかな見せ方が必要だったんじゃないだろうか。
他にも小さな違和感はあるけれど、もう置いておいて、良かったところを書きましょう。それは多くは中盤以降、アサが高校へ入学してからのシーンにあり、特に、同級生の3人の女子との場面を指摘したくなる。まずは、中学からの親友エミリ−小宮山莉渚。照明の落とされた体育館での、2人だけの会話シーンがいい。こゝは画面右奥のドア窓からの光が際立つ、四宮秀俊らしい撮影の見せ場でもある。
2人目は学年で一番の優等生・森本さん−伊礼姫奈(『毒娘』のちーちゃん!)。彼女が雨の屋上で涙するシーンも忘れ難い。後ろから傘をさすアサ。2人の引いた仰角ショット挿入に驚かされるが、あー!と叫んだ後に、呼応するような犬の鳴き声が聞こえるって面白い!これが原作にあるのかとても気になった。
3人目が軽音部で一人だけレベルが違う三森さん−滝澤エリカ。『ジオラマボーイ・パノラマガール』でもヒロインの山田杏奈を食うぐらい、この人が良い場面を作っていたと感じたが、本作ではそこまではいかないものの、矢張り、終盤の本作の気持ち良さは、彼女が導いている側面があるだろう。
というワケで、新垣結衣のキャラ造型について書かないなんてフェアじゃないという自覚もあるが、そこはもう割愛します。彼女が着ていた麻素材の長めのシャツ(ブラウス)がクタっとしていて、キャラをよく補強していると感じた、ぐらいは書いておきましょう。あと終盤に、開巻ファーストカットと、アサが朝、家を出るシーンをほゞ同じカット割り(かつ、いってらっしゃいの異なるニュアンス)で反復する構成は良いと思いました。
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