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[コメント] ルックバック(2024/日)

漫画でメシを食った経験者として言う。俺たちの頃とは比較できないほどハイレベルな画力を持ってるのに、なぜピエロを演じて世間のご機嫌をとる。俺の行ってたヤンキー高校の同じ学年に3人は漫画で身を立てた男がいたが、みな普通に健やかな若者だった。いつまで前時代の偏見を引きずるのか。稀代の歌手や天才バッターと同じ、ただの取り柄のある普通人なのだ。
水那岐

偏見といえば、4コマで大人顔負けの風景を描く子によって、ヒロインの人気者の座が奪われるのもデタラメだ。上手い絵と面白い4コマは別モノ。美声のディーヴァと天成のアイドルほども違う。「みんな違ってみんないい」っていう言葉は嫌いだが、この場合絶対的に正しい。

ヒロインの相棒になってゆく天才も、ここまで絵に描いたように変人引きこもり娘として描かれるのは、作者か担当編集者の思惑ゆえと読める。確かに俺も漫画描きによくいるつきあい下手だが、ここまで世間のイメージ通りだと反吐が出る気持ちだ。

その他漫画からの「卒業」とか、漫画に熱中する者が孤立していく描写とか、この作品には語り手が愛しているはずの漫画への嘲笑が溢れている。さっそく当時の呪うべきアニメスタジオ放火殺人事件から活かされた、ほぼ例外に等しい異常なオタクが重要な役柄として描かれるし…。作者はどこまでプライドを捨て、自分と仲間を貶めるのだ。

テクニックとして普遍的なメッセージがあることは、この作品を評価される普通人の皆さんの仰るとおり事実だ。だが、世間に媚び続ける描写が、いわゆる「オタク産業」に携わる若者の居心地を悪くしている事実ゆえに、俺はこんな作品は認められない。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ロープブレーク

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