コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!(2024/日)

ファーストカットは櫻葉学園高校の門(その銘板)。女性のモノローグが入る。主演はこのモノローグの主−新入生で文学少女のトコロさん−藤吉夏鈴。すぐに、彼女が憧れている学生作家(在校生)−緑町このは−を探す映画だと分かってくる。
ゑぎ

 しかし、冒頭で文芸部部長の西園寺さん−久間田琳加が登場して場面をさらい、さらに新聞部部長の−かさね−高石あかりが出てくると、もう序盤の時点で、真の主人公は高石だと了解してしまう映画だ。換言すれば、高石はそれぐらい儲け役と云えるし存在感がある。もう『ベイビーわるきゅーれ』以上の代表作と云ってもいいんじゃないかと思えるぐらいだ。

 本作でも、小林啓一らしいキャッチさせる切り返しやライティングが溢れていて、特に序盤は調子がいいと思った。例えば屋外の照明は私の好みだ。学園内の落ち着いた照明(露光オーバー気味の白い画面にしていない点)など。また、ロケ地として「柏の葉アクアテラス」(劇中では「Aqua Park」)が何度も出てきて、良い画面を作っている(最初のQRコードだらけのシーンは、緩い演出と思ったが)。あるいは、山さん−石倉三郎の印刷所が坂の途中(というか坂下)にあるという立地もいい。

 次に、無粋だが、気になった点も書いておく。まず、脇役の造型から。実は見る前から期待していた俳優があと2人いて、一人は中井友望−新聞部副部長役、もう一人は、ゆうたろう−ドローンを操縦する生徒だ(中井も『ベイビーわるきゅーれ』の2作目からのレギュラー、ゆうたろうは『殺さない彼と死なない彼女』を見てからずっと気になっている)。2人とも扱いが中途半端で残念だったのだが、いや中井はまだしも、ゆうたろうについては、カットされたシーンがあるのかと思えるぐらいだ。そして理事長役の高嶋政宏だ。これは予想に違わない実に臭い演技のタイプキャスト。でもその徹底ぶりは感心もした。

 また、終盤の、学校長がテロ行為とまで云うアクション場面と、文芸コンクールの授賞式場面がクライマックスだが、こゝも緩い演出でスリルの無い見せ方だし、巻き戻しイメージ処理でのフラッシュバックも、驚きに欠けるものだ。だから、ということもあって、トコロさん−藤吉の文学愛の強い科白は空疎に響いてしまったと思う。こゝはスクリプト(『辻占恋慕』の大野大輔)の責任も大きいだろう。

 あと、これも原作は漫画なのだろうと思いながら見ていたのだが、見終わってオリジナルの原案脚本と知り驚いた。漫画原作みたいなオリジナル作品の最たる例じゃないか。説明科白やモノローグ過多が気になった部分もあるが、スクリプトが良く出来ていたのだろうと推量できる部分も多々ある。例えばそれは、タイトルの元になっている「トロッコ」という言葉の扱い、エピローグの落ち着きの良さ、なんかが指摘できるだろう。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。