[コメント] シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024/米)
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"もしアメリカが分断され内戦が勃発したら"というifの世界を描いた作品で、結構宣伝とかでも話題になっていましたね。 監督はアレックス・ガーランドでアクション大作は初。加えてA24としても史上最大規模の制作費とかも謳われているので、さぞ素晴らしいアクション戦争映画を期待しちゃうじゃないですか。
ただ、実際予告等のイメージとは乖離のある作品だとは思います。たしかにアクション映画でも戦争映画でもあるけれど単純にそこに落ち着くような映画ではなく、むしろロードムービー色の濃い作品でした。
また、あからさまな政治色とかもあまり描かれていないように感じました。それに関しては私の無知ゆえのものかもしれませんが、そもそも作中で内戦が勃発した明確な理由も描かれていなかったように思います。 何なら「最後の日」って言ってるだけあって内戦も終決間際なんですよね。 だからわりとフラットな視点で見れますし、またそれを助長させてるのが主人公たちがジャーナリストであるという設定だと思います。
本作の特徴として、一貫してジャーナリストが淡々と、時に感情揺さぶられながらも写真に収めていく記録としての描かれ方をしてるんですよね。 本作でいえば大統領側の政府軍とWFの対立している構図になっているわけですが、主人公たちはジャーナリストとして中立であり、どちらの味方でも敵でもある。 中立というのもフラットと言えば聞こえはいいですが、関心を持った中立もあれば、本作でも描かれていた我関せずの中立だってある。
本作はある意味どちらの側でも語らないが故にこういう状況になりかねないという警鐘を鳴らすメッセージ性があると思います。 もちろんロードムービー的な側面は強いですが、各所のアクション描写の迫力は素晴らしいですし、特に音響は圧巻でしたね。アカデミー受賞とかも十分あり得るほどの緊迫感がありました。
以降内容に触れていきますが、主人公はキルスティン・ダンスト演じる女性記者のリー。そしてリーとは対称的に描かれていたのが新人記者のジェシー。 共に旅路を行くことになったわけですが、序盤は場数を踏んで肝の据わったリーに対して、凄惨な現場や名前も知らない人にも感情移入して取り乱す新米という対称的な描かれ方をしています。
本作は内戦を描いたロードムービーであると同時に、ジェシーという新米記者の成長譚的な楽しみ方もできて、中でもクライマックスでの対比は見事でしたね。 片や友人の死のショックを隠せず、記録を削除するという人間の尊厳は保ちつつも記者としてはあるまじき行為をしてしまうリー。片や経験を重ね、カメラに収めようとぐいぐい前に出ていくジェシー。 そのジェシーを庇って撃たれた直後、考えなくてもカメラを構えてシャッターを切ってる自分がいて、その後声をかけるとかでもなく置き去りにして現場を収めに行く。 記者としては明らかに成長していくわけですが、同時に記者として今後は心を消耗させていくのだろうというもの悲しさすらも感じました。
そもそも記者のカメラがまるで銃口にも見えるほど対照的に描かれていたのも印象的ですね。記者として、悲惨な状況とそうやって対峙するという姿勢も感じました。
結果的に大統領は射殺され、その傍らで笑顔を浮かべる写真でエンディングを迎えるわけですが、これはこの後どうなっていくんですかね。 アメリカの情勢とかにも疎いので調べたところ、WF側のカリフォルニアとテキサスはそもそも政治的思考が異なるため手を組むこと自体考え難いということでした。ただ、本作では共通悪として大統領が存在していたわけですが、それが亡き今結果的に対立し、内戦は終わらないのでは、という見方ができるようです。
ですがそういう小難しい背景まで知らないと意味ないやん、って作品にしたいのではなく、自分はあくまでもっと中立的な立場として、それこそジャーナリストの記録として残されたものを目の当たりにした一観客として本作を味わいましたし、そもそもそういう意図の作品なんだと思っています。 その結果、やはり印象的だったのは謎のクリスマスモチーフのパークで銃撃戦に巻き込まれた時の「あっちが撃ってくるからこちらも撃っている」という趣旨の言葉であり、本作随一の緊張が走った赤サングラスのジェシー・プレモンスの「お前はどっち側のアメリカ人だ」というような言葉ですね。 どっち側とかもわからず、そもそも誰が判断しているかも知らず、ただただ自分を守るためだけに他人を攻撃する。こういう構図はアメリカでなくてもどこにでもある構図だし、これはあくまで虚構でもそれを現実の記録のように映した意図っていうのはきっとそういうところにあるような気がしています。
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