[コメント] E.T.(1982/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まず、本来は被保護者たる子供たちがイーティを保護するということ。それは彼らにとって端的に「冒険」であり、さしあたり映画はその冒険ぶりを描くことを主眼とするが、とりわけ主人公ヘンリー・トーマス少年にとっては、イーティの保護者となることで自身の父親の不在を乗り越えるという意味合いも持つかもしれない。一方で、ラストシーンでのトーマスとイーティの別れの抱擁においては、むしろイーティが保護者的な表情と手の所作を見せる。この保護-被保護という点における感動的な二重の転倒が、却ってトーマスとイーティの類似性と平等性を保証し、映画をコミュニケーションの偽善から遠ざけている(『E.T.』の翻案『アイアン・ジャイアント』はイーティの役どころを「巨大ロボット」に置き換えることで、この保護-被保護の関係性をより複雑かつ豊かなものに描いています)。
「自転車」はやはりよいシーンだ。「飛ぶこと」以上に「自転車であること」が感動的なのだ。飛行の前段となるパトカーとのチェイスがよい。ここで実際に自転車に乗っているのはおそらくスタントマンであろう(周到にも子供たちはフードをかぶったりサングラスをかけたりなどして顔を隠しています)、俳優に行わせるには危険な自転車アクションであり、機動性における自転車の優位をよく見せている。
ただし、アレン・ダヴィオーの撮影は私には訴求しない。軟調ハイキーのいかにも「善良な」画面は著しく刺激を欠いている。むろんそれが物語の善良さとよく釣り合ったものであることは了解するが。
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