[コメント] 洲崎パラダイス 赤信号(1956/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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作劇は後半ドタバタしていて満足度は低い。相当に投げやりであり、川島は翌年『幕末』撮って日活やめる訳だが、ここですでに何か上手く行っていなかったんじゃないかと思わせる。轟夕起子の戻ってきた亭主植村謙二郎は関係のあった女に殺される件は淡泊すぎて話がよく判らないし(誰でも解説読んではじめて得心するのだろう)、途中まで大活躍の河津清三郎が終盤霞むし、新珠三千代がなんで逃げたのか科白でしか語られないのが不満だし、三橋達也に親切だった芦川よしみも霞む。そういう腐れ縁断ち切って再び勝鬨橋、という終盤と解釈したらいいのだが、映画はそう明示している訳ではないからこれは善意の解釈に留まる。
売春防止法からみの映画はミゾグチはじめたくさんあるが、特殊飲食を直接描写しない赤線映画は特異だ。冒頭の隠しキャメラ風の店頭の移動撮影はあんなに上手く隠し撮れる訳ないからセットかも知れない。ただ、轟の店で「ダニみたいな女」と侮蔑される田中筆子さんがひたすら印象的。桂典子を毎日買いに行く牧真介の件もやっぱり尻切れトンボに終わった。
美点は素晴らしいモノクロ撮影で、川が間近にあるからか(埋立てダンプが泥まき散らして通過するのに)フィルムが瑞々しく感じられる。轟の子供が立小便している処を見ると、あの家には便所がなく、離れた処に共同便所があったのだろう。ラジオで魚屋さんの歌がかかる間だけ、アラタマは三橋を蕎麦屋で待っていたのに、あとで芦川が「15分待っていた」というのはおかしい。歌は3分以内で終わるだろう。ここは何度見ても気になる。
ベストショットは河津のベスパに二人乗りしてとっとと去って行くアラタマ。三橋が秋葉原辺りを放浪してぶっ倒れて、土方の人に助けられて握り飯貰う件が好きだ。いろいろ書いたがよく判らない4点の魅力。再見。
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