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[コメント] はたらく細胞(2024/日)

「見立て芸」映画の極北。馬鹿馬鹿しさも極まれば感心させられ、少女体内の清浄な勧善懲悪活劇と純愛が、父の体内ではうらぶれたドブ板街での逃走劇と男同士の愛(『パタリロ!』の加藤諒!)と化す、原作の描写をド本気の演出力で一気に押し切る。アクションの見せ方も進歩したものだ。
水那岐

ところで、ゑぎ様の仰る、体内世界の西洋一辺倒の見立ては「西洋文化至上主義へのパロディ」だという好意的なご感想については、これは残念ながら好意的過ぎたご意見だと見ました。漫画原作は前に飛ばし読みしていますが、おおむねこの映画は原作をトレースしていると見ていいようですので…。

クリスマスが普及し、ハロウィンやイースターといった次なるキリスト教の祭礼がいろいろな企業の狙いで、宗教的意味合いのみを排除して広められる現象と、この映画の趣向はあまり異なっていない気がします。要するに今の漫画家と読者は、天女や釈迦如来に代表される東洋的な意匠の極楽浄土よりは、天使やギリシャ的な神殿に代表される天国のほうが親しい、ということなのでしょう。そして後半で見られる汚濁した体内が、一貫して昭和風の日本のイメージなのは、単に原作漫画のスピンオフである別の漫画家の作品であるからだと考えます。

…こう書いたところで、自分はこの世界設定に安易さを感じてはいないことに気づきました。実際安易であることは確かなのでしょうが、漫画家が現在の読者に「いちばん理解しやすい見立て」を提供しているだけの過ぎない作品がこれなのだ、と思われるからです。そのあたりのことに映画スタッフは気づいているでしょうけれど、敢えて変えないのは単にこれが若い世代の共通認識だからだ、と思います。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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