コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] はたらく細胞(2024/日)

タイトルの通り体内における労働の映画。というか「体内における」などという言葉は取り除いて、単に労働についての映画と云った方がいいかも知れない。あるいは、体内における細胞の活動が、激しい暴力に擬せられて描かれる映画だ。
ゑぎ

 それは自己完結的な内部での抗争だけでなく、外部環境からの侵略に対する戦闘でもある。例えばインフルエンザウィルスとの戦いといった場面もあるけれど、より顕著なのは、化学療法(抗がん剤)がロケット弾(誘導ミサイルではないと思う)、放射線治療はオーロラ・イメージの殺人光線になぞらえて描かれている。ちなみに、作り手に全く悪意はないと思うが、こういった描き方は、現在の標準治療のイメージダウンに繋がらないか、私はちょっと気になった。

 また、女子高生−芦田愛菜の体内は、Sci-Fi 的な長いエスカレータや、ヨーロッパのお城と古い街並みのメルヘンイメージがもっぱらで、細胞たちも若い男女か小さな女児がほとんどだ(病原菌たち−新納慎也小沢真珠片岡愛之助は除く。あと、赤芽球の卒業式みたいな脱核の場面の校長先生−鳳蘭!も例外)。対して、芦田の父親−阿部サダヲの体内は、徹底して昭和レトロな飲み屋街と路地裏、場末のキャバレーといったイメージが背景として選ばれている。細胞もジジイがほとんどで、例外は新米赤血球の板垣李光人ぐらいに思えた(先輩赤血球の加藤諒や外肛門括約筋の一ノ瀬ワタルを若者と云うのは憚られる)。

 尚、これらの美術装置やキャラ造型はヨーロッパ中心主義というか西洋文明至上主義へのパロディ、批判的なユーモアを狙っているのだと私は受け取ったが、単に毒されていると感じる人もいるかも知れない。さらに終盤の骨髄液が、天使のような衣装を着た白人の女児の走る姿として表現されているのは、白人至上主義的だと捉える人もいるだろうが、これもパロディ精神と受け取るべきと思う。それを云うなら、NK細胞の仲里依紗やマクロファージの松本若菜が大活躍してバランスを取っているという見方もできるが、他の男女の役割分担はジェンダーステレオタイプと云えるとも思う。

 さて、実を云うと、主要キャラで私が最も感心したのは、骨髄芽球の遺伝子異常で急激に成長してしまい、ラスボスとなるFukaseだ。この人は『キャラクター』でも新人離れした堂々とした存在感だと思ったが、本作でも悪く云えば一人浮いていると云えるかも知れないが、突出した魅力があると私は感じた。今後も映画に出続けてほしいと思う。あと、神経細胞のDJ KOOのことも書いておきたい。この人が出てくるたびに画面造型はチープになり映画から遠ざかるのだが、これもワザとやっているワケで、この反復は素直に楽しかった。あと、白組のVFXは、これで世界水準と云えるのだろうか。ハリウッド映画のそれも私は感心したことがほとんどない、という前置きは必要だが、やっぱりコンピュータ処理の画面は、スペクタクルが欠ける。このVFXも私には安っぽく見える。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。