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[コメント] 暖簾(1958/日)

川島は立身出世を喜劇のモチーフとして肯定し続けた監督で、大島・増村世代とは一線を画している。本作はこの一面でもって成功した作品。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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しかし特に面白いのは後半の多角経営ではなく、前半の押しつけられた夫婦の歴史に係る幾つかの断片であって、初夜の夜泣き蕎麦の件や焼跡をふたりして歩く件、山田五十鈴乙羽信子と親しく語らう後年の件などは、夫婦の機微を描いて求心力に富んでいて、記憶に残る。

山田五十鈴の巧まぬユーモアは見事なものだと思って当時のインタビューを読むと、彼女は巧まぬユーモアを演じたいと発言しており、巧まぬユーモアも演じるものなのかと勉強になった。まあ、山田五十鈴が天然であるはずはないけど。

中村メイコの使い方も好きだ。終戦直後の物価統制の説明や入札の場面、昆布の野積された絵面などから、当時の商人の世界が伝わってきて興味深い。しかし暖簾の思想はついていけない。あれえ、他の映画では否定していたじゃない、監督。喜劇人の無節操ってやつなんですか。

(評価:★4)

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