[コメント] サンセット・サンライズ(2025/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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普段そこまで劇場まで足を運ぶタイプの作品じゃない気はしましたが、評判も良いですしクドカンさんの脚本だし、とりあえず後で後悔しないように劇場鑑賞してきました。
主演の菅田将暉さんがコロナ禍によるリモートワークに変遷したことを機に三陸の田舎町へ移住するという話です。 ようやくコロナと聞いてもそこまで眉をひそめるような空気感はなくなってきましたが、当時はやはり未曾有の非常事態であり、三密だのディスタンスだの、かなり神経質になっていたのを覚えています。 ちょうど当時は自分の勤務地が少し田舎だったこともあり、かなりのギャップは感じていましたね。まあコロナという未知のウイルスだっただけに、住んでいるところや年齢層によっても差があるんでしょうがそこまでしなくてもと思うことも多々あったりしました。
そんな誰もが通ったコロナというのは、本作ではあくまで笑いどころとしてのアクセントとして用いられているように感じました。 東京から突如移住してきた西尾さんに対しての「ディスタンス!」とか、目の前にいるのに電話で会話とか、ちょっと過剰ではありますが、あったあったと思い出し笑えるようなコメディ要素でしたね。
実際コロナのくだりも前半だけですぐに明けます。自宅待機2週間からの解放ですね。 菅田将暉演じる西尾は実に社交的で、キャラクターとして非常に魅力的であり、地元民との交流も積極的に関わっていきます。 そこもまたハートウォーミングなやりとりがいいんですよね。茂子さんとの「け!」のやりとりとか最高でしたし、ももちゃんの幸せを祈る会のメンバーの怖くて優しい歓迎とかも信じられないくらいお腹が空きます笑 あ、本作飯テロ映画でもありますね。三陸で取れた海鮮料理とか芋煮会とか、とにかく美味そうで美味そうで、飯時に見る映画ではないですね笑
そしてそんな宇田濱で空き家を貸してくれたオーナーの関野百香に西尾は惹かれていくわけです。 百香を演じたのが井上真央さんですが、個人的には井上真央史上で一番良かったですね。ヒロイン役とかも少なくなった気はしますが、年を重ねたことでむしろ素敵になった印象を持ちました。 ただ、単純に田舎って素敵だよ映画には本作はなってないんですよね。地元の人たちとの交流の中で、空き家問題や移住への弊害、そして三陸といえば震災のことにも向き合った作品になっていました。
こういう田舎暮らしを描いた映画って田舎最高ってことを謳ってるだけの作品ってごまんとあると思うのですが、本作は別にそういうところだけにスポットを当てているわけではないんですよね。 地元民との交流だって、希薄な人間関係に孤独を感じている人から見れば魅力的に見えるかもしれませんが、実際にその土地に暮らしてみれば、人のプライベートにもずけずけと踏み込むような余計なお節介に嫌気が差すなんてこともざらにあるでしょうし、百香なんかは辛い過去を抱えているからこそ宇田濱生まれ宇田濱育ちだとしてもそういう煩わしさを感じていると体現していました。
現に本作で描かれる地方の人たちの偏屈な考えってのは象徴的に描かれており、いざ空き家問題解決の糸口となりそうな企画が動いても、東京に対しての劣等感からかなり卑屈に構えているのが表されていましたね。 一方で東京の人が地方に対してのマウントを取るようなスタンスってのもやはり感じられて、印象に残ったのは西尾の同僚が言い捨てた「被災地の人って助けてもらって当然みたいな考えがある」という旨の発言。 いや、すげえこと言うなと思いましたが、そこにもやはり根底には都会と地方の格差みたいなものがあるんだろうなと思いました。
だからこその西尾というキャラクターの真っ直ぐさというのが百香には他とは違って映ったのでしょうし、西尾もまたただただ真っ直ぐな男なので、「百香さんが好きで、宇田濱が好きで、あとはどうでもいい」って言葉には田舎で暮らしたいのに田舎ならではの煩わしさを感じている本作らしいメッセージと西尾というキャラクターが合わさったいいセリフだと思いました。
ただ本作は地方のことを悪く描くための作品でもないわけです。 先ほどのセリフのシーンで、「外から来た者からすると震災を経験していないからどうしたらいいかわからない」という旨のセリフもありました。 そのアンサーとして竹原ピストルさんが「ただ見てればいいんだ。そしてたまに見に来てくれればいいんだ。」と返していました。 震災が起こる前は目も向けてくれなかったと指摘し、都会と地方という格差を認めた上で、地方に目を向けてくれたことが嬉しかったこと、また来て美味しい物と美しい景色を味わってくれればいいことを伝えます。 思えば本作ではやたら食事が美味しそうなシーンが多かったわけですが、その意図も結局こういうところにあるわけで、移住という土地とのしがらみを感じるような大事ではなく、気軽に遊びに来てくれればいいんだというメッセージだと受け取ると、すごくストレートですが自分の中ではあまり向き合って考えてこなかった問題だっただけに、すごく考えさせられ響いたシーンでもありました。
そもそもコロナというのは誰もが経験したものとして共通項の笑いどころにできますが、震災とかってその地方に限定されたもので、その土地の人にしかわからないものなんですよね。 そういう対比だと考えると、単にコメディ要素としてのコロナではなく、非常に重要な要素のように感じました。
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