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[コメント] ANORA アノーラ(2024/米)

たとえそれが性サービスであろうが、売り手と買い手が互いの価値を認め合い、望んでいる欲望(性と金銭)の充足度が均衡を保っていれば経済合理は成立するわけで、アノーラ(マイキー・マディソン)もまた、ワーキングウーマンとして“平穏な生活”のなかにいた。
ぽんしゅう

一方、端から経済合理の埒外にいるロシア富豪のバカ息子(マーク・エイデルシュテイン)に労働の価値など分かるはずもなく、アノーラに“値を付ける”ことなどできないわけで、裏返せば自分の性欲の価値も分かっていないガキであり、当然のごとく結婚を含む世の中のすべての制度は自らの欲望を消費する手段なのだ。

世の中に“奪うだけの者”が存在することを知った女は、雪が降りしきる街角で、最後のシェルターであるいわくつきの車のなかで、いわくつきの指輪とともに、彼女の心を知る者に身をゆだねる。この雪がやんだとき、もうアノーラはワーキングウーマンには戻らないでいて欲しい。

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』と同様、そんなショーン・ベイカーの祈りが込められた素晴らしい物語だった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] jollyjoker

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