[コメント] 教皇選挙(2024/英=米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
聖職者たちってさすがに人格者なのですね。という描き方から一転、そんなわけねえじゃん、所詮は人間どもよ!とあっさり暴き出す展開がさりげなく鮮やかだったと思います。まあ、真面目に信仰している信者の方たちからすると「なにこの描き方!」と怒り出すような話でしょうから、僕自身の宗教に対する温度感というか、信仰というものに向き合う度合いとぴったり合っていた、に過ぎないのかもしれません。
主人公のローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)が、自分の中に「教皇になりたい」との野心はないと言いつつ、友人のベリーニ(枢機卿。=スタンリー・トゥッチ)を推したいという自身の気持ちの中にも欲望のあることを明白に自覚し、やがて、選ばれるのであれば自分こそが教皇になりおおせようという心境に変わっていく流れなのだろと思いつつ(思わされつつ)観ていました。
自分の名を初めて書いた投票用紙を投票箱(?)に入れた瞬間、地響きが鳴り渡り、礼拝堂の壁が突き破られるというこれ見よがしの展開に、ああこりゃなんでもアリなんだなと悟らされました(という気にさせられた)。アフガニスタンのカブールでカトリックの司祭を務めていたとかいうナントカ氏(ベニテス枢機卿)あたりが、すべてを見越した悪巧みの張本人かも、みたいなね(「いかにも感」満載の善人風だっただけに)。
しかし、こちらの貧相な想像力の斜め上をはるかに上回る予想外の展開。ベニテスは、男性として生を受けながら、身体の一部に女性的な機能を持つという「自身の性さえ確信できない揺らぎ」の内に生きる人物。ベニテスが結局は行くのを止めたスイスの医院が 「病院ではなくクリニックだった」という折角のキーワードからそこまで読み取る余裕はございませんでした。鮮やかに技ありを取られた思いです(←一本だろ)。
最終的には、余命を悟った前教皇が、側近のローレンスにもベリーニにも力不足を感じ、もしかしたら票を集めるかもしれないトランブレ(枢機卿。=ジョン・リスゴー)やアデイエミ(枢機卿。=ルシアン・ムサマティ)にも策を巡らし追い落とし、絶対に避けなければいけないテデスコ(枢機卿。=セルジオ・カステリット)の対抗馬に、ベニテス氏を周到に用意していたという話でした。
明日から予定される本物のコンクラーベでも、本当に根比ーべだと思いますが(←どうでもいい)、ここまでのドラマはないだろうと思わされます。ごく普通の一般的には、やっぱ小説の方が事実より奇なのでしょう。さて。
80/100(25/5/6見)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。