[コメント] 四畳半物語 娼婦しの(1966/日)
全編に渡る流麗なワンシーン・ワンショット演出に見とれる。特に昭和の廃屋から大正期の待合(この家屋が裏の主役)へタイムスリップし、そこに現れた女(三田佳子)の所作と会話を追いながらオフスクリーンの声の主(田村高廣)と同衾に至る導入部は圧巻。
永井荷風とおぼしき東野英治郎のナレーションに導かれたこのタイムスリップシーンには、大正末期にヒットし、時代を経て本作の製作当時(昭和36年頃)に別歌詞でリバイバルヒットしていた名歌謡曲「君恋し」が重ねられるという周到かつサービス精神旺盛な音響演出が施されている。
三田と田村の周りを固める車夫(露口茂)、女将(木暮実千代)、後輩娼婦(野川由美子)、上客(進藤英太郎)とその妻(浦辺粂子)らのキャラ立ちとそれぞれに準備された見せ場のエキセントリックでいながら説得力を持って苦笑を誘う成沢昌茂演出の楽しいこと。
女(三田佳子)と男(田村高廣)の情の交感が溝口健二ほどの情念を帯びず劇的なシーンですら淡泊に感じるのも成沢演出の味なのだろう。
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