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[コメント] フロントライン(2025/日)

原理原則(=正論)が成り立たない最前線で、じゃあ原理原則がだめなら人間は何を基準に判断するべきなのか、と問うた作品。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







物語のターニングポイントで、感染症の専門医が動画で感染対策が成ってないと、その原理原則たる「正論」を述べたことと、報道を通じてそれを知った一般市民が、ダイヤモンドプリンセスに乗り込んで医療にあたっていた医療従事者は病院に勤務させるな、その家族は子どもを保育園に連れてくるなという「正論」を展開する。その結果、医療従事者の人手と受け入れ先の病院の不足に拍車をかけていくことになる。でも正論を訴えた人たちは、その結果に何の責任も負わない。そりゃ言ってることは正しいから。

劇中で「正論じゃ組織は動かない」という台詞が出てくるが、いままでは最前線というような修羅場では人間は理性が保てなくなり、理念が機能しなくなるというふうな考え方をしていたのだが、そうではなく、人間はそもそも理念だけでは飯が食えない(生きていけない)というふうにこれを観て思った。なぜなら最前線で人間は別に理性を失ってはいなかったから。隔離された夫に会いたいという老婦人や、感染レベルを危険なほうにあげても弟と一緒にいることを望む兄が主張する身体性は、人間が生きていくのに必要なもので、それを鑑みない理念は現実において役に立たないという、つまり理念と現実のバランスの取り方が重要なんだな、という風に思った。

戦争という現実と、戦争の理念が並行線をたどるのもそういうことなのだろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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