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[コメント] シザーハンズ(1990/米)

ねじれた性善説。
グラント・リー・バッファロー

デビッド・リンチを悪意の作家とするなら、ティム・バートンは善意の作家である。脅えた目をした主人公と周囲の悪意、ティム・バートン作品はこの構図を何度も繰り返す。それはむしろ彼が主人公の中の純なる心を信じているからこそだろう。

そんなバートン作品の構造は、ラース・フォン・トリアー作品と実はすごく似ていると思う。トリアーは周囲の悪意をもっとねっちょりとおどろおどろしく描き、徹底的に「純なる」主人公を痛めつける。トリアーの場合、主人公の「純なる部分」もある程度相対化してしまうが、究極的な部分ではバートンと同じようにねじれた性善説の持ち主に感じる。(ただ、両人に共通するストーリー運びの強引さ、恣意性はあまり好きになれない)

そう思うからこそ、同じくねじれた性善説(でいるつもり)の私からすると、本作での受け入れ先の母親の心の中に何か不純なものがあるのではないか勘ぐってしまうが、そういったものは最後まで「おとぎ話」というカテゴリーの中で押し殺されてしまう。だが、おとぎ話や寓話といったものこそ、現実以上に生々しい人間の感情が剥き出しに顕れるものだと思う。だから、優れた寓話作家であるトリアーと比べてしまうと、バートンに関してはキャラクターの掘り下げが足りず、若干の物足りなさを感じてしまう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)torinoshield[*] けにろん[*]

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