[コメント] 7月4日に生まれて(1989/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
つまり、ロニーとは旧き良き善良な米国人の若者の象徴、或いは記号であることは容易に読みとれる。映画の本筋は、時の権力や政策によってもはやそれらは駆逐され、イノセントな正義に燃える米国人の時代の終焉を描いたものなんだろう。好き嫌いは別にして、自身もベトナム体験あるオリバー・ストーン監督の映画なんだから、主観的主張が盛り込まれるのは無理もないこと。
それよりもワタシがこの映画で心動かされたのは、もっと別なところ。それはロニーが(非人間的な)戦場で傷痍し、(非人間的な)治療を受け、その後後遺症が残って(非人間的な)車椅子生活を余儀なくされ、(非人間的な)人生に絶望していくプロセスを彼の視点から淡々と描いているシークエンス。
一度も本来の機能(セックスし、子孫を残すこと)を果たすことなく、萎えたままの自身のペニスを自嘲し、「もうだれも僕を本当に愛してくれる人はいない」と半狂乱に陥る。もしこれが自分の身に起こったならと考えると激しくうろたえ、動揺し、狼狽するのは明か。これはもう、半身不随=歩けない障害を負う、ということ以上に深い絶望感と喪失感に違いあるまい。メキシコの娼婦のリードで初めて事に及ぶことが出来たとき、ロニーが流した涙は心底心を打つ。
彼が車椅子になってからはキャメラのアングルもロニーの視線の高さになっていることにも注目。ちっぽけなヒューマニズムを語るよりも、これらの描写をたたみかけられる方がずっと効果的なのではないか。
ここを描ききってしまった後では、その後の展開や監督の主張は、ワタシにとってもはやどうでもよくなってしまったのであった。もともと好きな監督作品じゃないけど、上記の理由により、★1ヶ+。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。