コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 望郷(1937/仏)

ペペがギャビーの肩越しに見た絢爛たる故郷パリへの郷愁と、俺がカスバを通し抱いたロマン溢れる「泥棒紳士の時代」へ叶わぬ憧憬が、完全に重なり合う珠玉の名ラスト。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







俺も思わず、あの格子戸を掴んでしまうところだったよ。

異国の地を舞台としたメロドラマと見せかけて、実に意外なほど文学性、そして芸術性に富んだ作品。邦題のセンスも抜群で、昔の映画翻訳者は本当に凄いなと唸らされる。

ルックやムードのバラ付きは、そのままカスバの二面性、狭雑さを表しているようで無意味なものとは到底思えないし、様々な角度から切り取られるカスバの立体感、泥棒たちの秘密の抜け道となっている屋上の造型、内通者を銃殺するシーンに於ける天使の落書きの使い方、そしてラストショットと、印象的なシーンが幾つも幾つもある。一舞台ものとしては掛け値なしのマスターピースでしょう。少なくとも『カサブランカ』よりは数段クール。

それにしてもリーヌ・ノロが演じたアルジェ人女性イリヤは、藤圭子や梶芽衣子も歌ったムード歌謡のスタンダード「カスバの女」そのままに、エキゾチックな容姿の中に演歌の心を隠し持った可愛い女だったねぇ。古い奴だとお思いでしょうが、あんなパリのアバズレなんぞよりはよっぽど良いと思うんだが・・・。それもみんな、カスバが悪いんでしょうかねぇ・・・。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ジェリー[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。