[コメント] 柔らかい肌(1964/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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不思議なことにしばしば男というものは、手に入れるまでは熱くなりっぱなしなくせして、ゲットしてある程度揺ぎない関係を保ち始めると、途端に頭が冷め周りが見えてくる(仕事や家庭を振り返りはじめたり)。そして女はどちらかと言えばスロースターターなワケで、男に対して真の愛情を注ぎ始めるのは、実はその関係が始まってから、というのもよくあるケースだったりする。
この映画の中では、出会いのときはさておき、結婚へ向けて再度男は熱くなるワケだが、上記の差異を考えずに、男のペースに無理やり女を巻き込もうとしたことで、案の定全てがご破算になってしまう。上手くいかないもんですねぇ。
そして男の煮え切らなさや弱さも、とても克明に描かれている。「今は待ったほうがいい」「少し時間をおいてから・・・」。例えばはじめて彼女の部屋に泊まろうとするクダリ、それから浮気を妻に正直に告白するか、なんてクダリにおいて。常に猶予を求める男と、白黒ハッキリつけようとする女。そして男の猶予というのは、別に相手のことを冷静に思い遣ってのことではなくて、自らのケチなプライドや体面に、深い傷を負わせないための姑息な手段でしかない。どこか強気になりきれない不安げな男の目の見てると、そんな魂胆が透けて見えるようだ。同じ男としては、少々自己嫌悪も(汗)。
ともあれ男の弱さと女の強さという構図が繊細に(かすかに自虐的に)描かれていく。時折挿入される映画的なシーンと共に、いかにもトリュフォーらしい仕上がり。それにしても、夫がどんな女と浮気してるのかと見た写真。それがこともあろうにドルレアックですよ。銃を突きつけるかは別としても、正気を失うのも無理はなし。
(2002/11/29)
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