[コメント] 夜霧の恋人たち(1968/仏)
これは観ていて幸せになれる作品。オープニングの唄の暖かさといったら!一人で観ていてもまるで彼女と一緒に映画館で観ている気分にさせられる・・・かな?
★4.5
自分の心に迫るものがあった。
ユーモアのほほえましさ。殺人事件も暴力もなく、特異な出来事もなくドワネルの日常にまつわるエピソードを巧みに組み合わせて作られた映画。
例を挙げればきりがない。クリスティーヌがドワネルの職業を推測する場面。ドワネルが電話を悪知恵を働かせきる場面。ドワネルが靴屋の試験を受ける場面。ドワネルが英語の練習をする場面etc。
一癖も二癖もあるキャラが味を深めている。靴屋の主人やラストの告白男などコメディ映画に出てきそうだ。
一つ一つの会話に至るまで全てが暖かいのだ。退屈とは全く無縁だった。素材は格別変わったものではない。他の有象無象の映画との差異は《作り手の視点の暖かさ》と《制作のテクニック》に尽きるだろう。特に小出しにされる映像の面白さは作品にリズム感を与えている。恋愛から微妙に的をはずしているのもいい。純粋な恋愛ものというよりはむしろ−語弊はあるかもしれないが−青春ものだと思う。
ドワネルは特に要領が良いわけでもない。ミスもするにクビにもなる。それでも毎日生きてゆくのだ。羨ましいのはとてもいろいろな出来事が起こって(これは探偵社に勤めている為かも)、一日々々が充実していることだ。否、全ての一瞬さえ充実しているようにさえ見える。もしかしたら自分だって同じような日常を送っているのかもしれないが、今日が楽しかったと気付くのはずっと後になるんだろう。これはある意味(トリュフォーの)《思い出》の映画なのかもしれない。だから回想特有の暖かさに似たものを感じ取れたのだと思う。
よく晴れた日曜日の昼下がりのような映画だった。
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