[コメント] 残菊物語(1939/日)
あゝもう完璧じゃないか。これも全カットが「映画は画面だ」と静かに主張しているかのようだ。そんな中でも、次の場面は特筆に値する、というか筆舌に尽くしがたい素晴らしさだ。
まずは、最初にお徳(森赫子)が菊之助(花柳章太郎)を諭す、夜の道を土手下(掘割)から撮った、延々と移動する仰角カット。風鈴屋が出て来ることで、このカットの力が増幅する。あと何と云っても、お徳と菊之助が台所で西瓜を一緒に食べるシーン。この幸福な描写の切なさといったら。このシーンが、後の場面の感傷性(さらなる切なさ)を際立たせることになる。そしてエンディングの道頓堀の船乗り込み。船には角座の提灯。このシーンも何て豪華で美しいのだろう。さらに、何とお徳の描写とクロスカッティングされるのだ!本作は画面に映った対象、その変化、構図、距離感等が次のシーン、後のシーンの感情をどんどん昂進させる演出の極まった例と言うこともできるだろう。(しかし、こんな映画を前にすると、どんな褒め言葉も虚しくなる。)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。