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[コメント] 米(1957/日)

本作はともかく撮影がいい。『』の現代版が目指されたらしく、この志に恥じない内田吐夢ばりの重厚さがある。舟を淡々と漕ぎ続ける中村雅子の佇まいがとても印象深い。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







牛使った手作業の田植えが丁寧に記録される。泥まみれの草取りも詳述される。望月優子は草取り、中村雅子の水路から水ひくための水車に乗って足で回す有名な描写。中村は、あれは何だろう、家で機械使った藁作業をしており、裸足で歩いている。中原ひとみは機織りをし、網は木樽で煮て干され、望月は夜に提灯持って歩いている。全て記録的価値がある。

原泉さんの一家は小作。長男の南原宏冶は次男の江原真二郎に自衛隊を勧めたりする。この一家が主役と思いきや、望月の一家に視点が移るのがやや違和感のある作劇ではある。妹の中原ひとみがあんまり活躍しないのはさらにいけないが、些細なことではある。

元自衛隊の木村功らは夜に舟漕ぎ出して集団夜這いして中村雅子の入浴覗いて母親の望月に水ぶっ掛けられる。そして望月が山形勲に、次男分家させたいから田返せと迫られている処までを江原は覗いてしまい、後半の大金貸す件に繋がる。まるで知らないのだが、小作農地に借地権はないのだろうか、それとも小作に知識がないということなのだろうか。山形は最後には裁判だと息巻いている。望月の亭主の加藤嘉は置物のようだ。

半農半漁で、江原は花沢徳衛に述べ縄(はえ縄)での鰻釣り習っており、夜這い翌日に望月・中村雅子の舟と遭遇してバツが悪そうにしている。この霞ヶ浦の光景もとても美しく撮られている。望月の鰻は量り売りされて安値。江原と木村は帆船借りて夜中に刺し網漁してワカサギ獲っている。この小魚は湯で煮て翌日天日干し。この帆船が並ぶ画もとても美しいが、悲劇を呼ぶことになる。

木村功は再会したお目当ての既婚者と舟で同衾して監視船(こんなのあったんだ)に発見されたりする。木村は江原と一緒に杉狂児に雇われて刺し網で境界線越えて稼ぐ。木村は家追い出された江原と同居して、半反でもいいから兄貴から田圃でも貰え、そうしないと俺みたいにその日暮らしと語っている。軽薄な木村の意外な諦念だった。ふたりの舟の網が杭(漁場荒らされた境界向こうの漁民の対抗措置の由)に引っかかって舟転覆して、江原は中村雅子に助けられるが木村は水死と報じられる。

おらも刺し網ほしいと呟く望月は夜中に舟漕ぎ出して盗品らしい刺し網して境界越えていて監視船に捕まり、刺し網没収されて警官の手に噛みついてしまう。山形に公務執行妨害であんた逮捕される、田圃返すか1万円くれたら仲介すると云われて望月は中村に、江原に借りてくれと頼む(江原救出して懐の札を籠で干している)。「親のためなら身売りする娘だっているっちゅうに」。

望月は雨中を破れ番傘さして鰻持って土浦警察に出頭。チャン・イーモウの映画のような都鄙の落差だ。玄関で人にぶつかって鰻ひっくり返して警官が鰻取りをはじめ人が寄ってきて微笑ましい光景になるが、望月にはこの光景は恐怖でしかない。逃げてしまう。町中は彼女のいる処ではないのだった。『自転車泥棒』のような酷薄。

望月は身投げ。木村も望月も死の瞬間を描写しないのが今井にしては珍しい。ただ夜中に水路を探し回る中村雅子と弟の姿をクライマックスとしている。最後は望月の野辺送り。バスで到着した原泉と江原が中村と目礼したあと、黙ったままその最後尾について、映画は終わる。このハードボイルドも素晴らしい余韻があった。美しい光景と貧乏の酷薄とのアンバランスが現実としてフィルムに定着されている。

脇では小池栄子似の何かと喧嘩する木村功の妹の岡田敏子がいい。洋装して江原にアタックして散ってイヤリング放り投げ、カップル集う荒地でマムシ騒ぎを起こしてカップルを混乱に陥れている。東京で失業して戻ったアイスキャンディー売りの清村耕次に次の仕事に誘われて木村の給料取って駆け落ち。こういう脱出願望は農村ものらしい。

撮影は刈入れ後の田圃、群青色の水に桃色の朝焼けが映えるOPの背景からして重厚。冒頭では馬が境内に突入し、日の丸の扇子頭に載せた巫女が踊る、裕福な村の鎮守の田植祭が記録されている。大勢の村人が集っており、こんな光景はもうどこにもないのだろう。中盤にも賑やかなお祭り、船上でのおかめヒョットコの踊り。しかしこんなのは山形ら富農のものなんだとも思わされる。

その他、杭一本だけのバス停、電気代になった兎を恋しがる息子など、端々にわたり抑揚のある演出が素晴らしい。撮影は船上の一部がプールと判るのが地味で残念。方言はなかなかに聞き取りにくく、英語字幕版で観直したい。再見。

(評価:★5)

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