[コメント] 12モンキーズ(1995/米)
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私が28歳の誕生日を迎えた時、人類は滅んだのか…
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当時、久々のテリー=ギリアム作品とあって、大ファンだった私は指折り数えるように楽しみにしていた作品だった。そして、その望み通り、見事な悪夢世界を作ってくれたギリアムに惜しみない拍手を送った。たとえ後にこの作品のオリジナル『ラ・ジュテ』を観て、そのイメージに圧倒されたとしても、やはりギリアム作品として、この『12モンキーズ』は私の中で非常に強い印象、光を保っている。
『ラ・ジュテ』と本作を較べると、時間の関係や撮影の問題などで、前者の方が遙かに純化され、謎の部分の解明も非常にスマートだったのに対し、本作は余計な部分をずいぶんと詰め込み、ややストーリー的にたるみが見られたりするが、その辺はさすがギリアム監督。その余計な部分をわざと放って置いて、すっきりしないまま終わらせたのは、一種の確信犯ではなかろうか?(ちょっとうがった見方かな?)。劇中至る所に登場するキー・ワードほとんど意味が分からない。と言うより、多分意味そのものがあまり無いのではないかとさえ思える(タイトルの『12モンキーズ』でさえ、実は全く意味を持たなかったと言う強烈なオチを残していた)。これを真面目にとって観たら、幾通りもの意味が見えたりするので、そう言うのが楽しい人は真面目に観て、出来たらその人なりの解釈を教えてほしい。大変な可能性を秘めた映画なので、是非色々聞きたいものだ。
後、この作品に限ってのことではないが、ギリアム監督はよくノイズ音を用いる(私なりにノイズ音の一番上手い監督はキューブリック監督だと思ってるけど)。特に本作では特徴的に用いられている。全くの無音状態の2035年時の地上。猥雑な1990年の町並み。精神病院での不協和音、クライマックスとして1996年のラジオから繰り返し流れてくる事件の声…どれも微かに精神をいらだたせるような、何か意味を持ちそうで持たない不思議な感触を与えてくれる。そう考えると、この作品はむしろ皮膚感覚で観るべき映画なのかも知れない。
この作品を彩るキャラクターだが、本当にギリアム監督はピン・ポイントで良い役者を配する。主人公のコール役ブルース=ウィリスは“ヒーローとして仕立て上げられたヒーローになりたくない男”を好演し、『ダイ・ハード』以来のマイ・ヒット。後、どうしてもギリアム監督に使ってもらいたくて自己PRまでしたというブラッド=ピットも、いつもとはまるで違うイッちまった役を巧く演じていて、アクセント的に良い味だしていたと思う(芸幅を広げるのには良い機会だったんじゃないかな?)。ただ、この役が本当に彼に合う役だったかどうか。ヴァル=キルマーかジョニー=デップであったら、ますます良かったような気もせんではない。マデリーン=ストーは、良い役とは思うけど、後半の狂乱の演技がやり過ぎっぽいかな?…ところで今初めて知ったけど、デヴィッド=モースまで出てたのね。見事に好みだ。
それと勿論本作も“夢”の演出はますます冴える。1990年の悪夢のような出来事が唐突に終わり、あり得ない田園風景を見せられた後、ますます救いようのない状況に落ち込まされる主人公の姿がブラックな笑いと共に印象に残る。悪夢のような世界を彷徨い歩かざるを得ない主人公って言うのは、ほんと、心惹かれるねえ。
設定、キャラクター、雰囲気、ケレン味、共々に最高に好みの一本。
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