[コメント] キクとイサム(1959/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
戦後、連合軍統治下の日本では混血児の問題が浮上していた。それに対し、数こそ少ないながら色々と働いた人もいたのだが(元華族の沢田美喜が私財を投げ打って孤児院を作ったのは有名だが、日本以外の国からも色々と援助の手はさしのべられた)、戦後、復興期もまだの日本では混血児絡みの事件は数多く起こっていた。誰にも望まれずに生まれてきた子供の悲惨な話は枚挙に事欠かない。
ただ、それを悲惨なだけに考えるのではなく、そこで強く育ったこども達も数多くいるのは確かな話。本作はそんな埋もれてしまう歴史の一コマを切り取ったような作品となっている。監督の今井正は戦前からこういった作品を数多く撮っていることで定評のある監督で、本作は戦後になって本当に自分の作りたいものを作れると言った雰囲気に溢れている。
ただ、私にとっては本作を初めて観た時期が悪かった。何せ私の故郷を舞台にした作品であり、しかも人類愛に溢れた作品だって事で、中学の時に学校で上映して強制的に観せられた。
こんな暗い、しかも古い作品を観て、「面白い」と言える中学生が一体何人いると思うのだ?
多分今観たら随分印象も変わってくるだろう。そう言った施設で働いている人や、今も社会運動のために一生懸命活動している人に多くの知り合いが出来たし。それに自分自身もそう言った施設には行く機会が多いし…
ただ、映画単体として観ると、演技を学んでないこどもを出すことで、どうしてもたどたどしい印象があるし(主役二人は脚本家の水木洋子が自ら探し出した素人)、社会問題をあまりにも前面に出しすぎたため、エンターテイメントとしては見られなくなってしまった。社会問題に対して戦う姿勢を前面に出したと言うことで評価されたんだろうが、物語自体の完成度はさほど高いとは思えない。致し方ないのだが、偽善的な意味で心地悪い気もする。私の皮肉な性格が災いしてる。
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