[コメント] アラバマ物語(1962/米)
静かな物語は一見物足りなさを覚えない事もない。しかし細部に宿りたもうた神々の<言葉>は、否応なしにこの作品を☆5点に押し上げた。家族に見せたい名作。
導入部のクローズアップ画面の構成は、これが1962年の作品かと驚かずには居られない。この作品がジャンルを問わず後のアメリカ映画に及ぼした影響は甚大なのではあるまいか。静謐な画面と幾らか不安を残した音楽は、この映画にホラーの要素を与え、それがこの作品世界から現代社会への警鐘にまで高められている。
これを「旧き佳きアメリカ」といってしまっていいものであろうか。ぼくはもう「アメリカの良心」という虚構を信じなくなった者だが、この作品の中の主人公アティカス(グレゴリー=ペック)は、明らかに日々闘っているのだ。彼は差別の憎しみが吹き荒れる南部の中にあって、家に銃を敢えて置いていない。愛娘スカウトに決して喧嘩をしてはいけない、と強く叱る。他のアメリカの父親なら屹度正義のために闘う事を褒めただろう。明らかにアティカスは、周囲の常識に対して信念を以て立ち向かっているのだ。「アメリカ」に対して闘っているとさえ言っていいのではないだろうか。
皆さんが激賞しているので付け加えるまでもないが、ペックでさえその場で舌を巻いたというロバート=デュバルの名演。元々好きな役者だったが、…本当に素晴らしい。
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