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[コメント] 武器なき斗い(1960/日)

下元勉の山宣造形が飄々として好ましく、知性の先に活動(極道!)のあったことが丁寧に捉えられている。まるで運命を愉しんでいるかのよう、羨ましい人生。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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主人公が余りに魅力的なため、その他の登場人物の多くが木偶の坊に見えてしまうのが残念、それは収束の墓参りの場面に顕著である。『日本の夜と霧』が撮られた年に、党員監督が共産党の引き締めに本作を物したという守りの姿勢がこの収束に見られもする。労農党と共産党との関わりがあんなに親密だったのかは疑問で、最後に戻ってきて参拝する青年本田(中谷一郎)は満鉄職員というよりも、共産党代表の謝罪というニュアンスがみえるように思う。

しかし作品全体にとってこれは些細なことで、観客は農民運動への参画を本作で体験することができるのだから、共産党もそこにいてくれないといけない。選挙演説における警察官の妨害はブラックユーモアになっており、一斉検挙の幻想的な描写はとても優れている。

山宣の主張は戦後に達成されたが、それは彼が望んだ国会での国民の合意というプロセスではなかった。これを云ってくれないと困るという想いもあるが、一億火の玉でないオルタナティブが国会にもいたのだと確認させてくれるだけでも、本作は貴重であるだろう。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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