[コメント] 秋津温泉(1962/日)
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1945年8月15日、敗戦の屈辱に負けて死を選択した者、涙をこらえて生を選択した者の二通りに分かれたが、生を選択した者はその後の日本の奇跡的な復興を果たす。敗戦で味わった屈辱感を時々思い出したことが原動力になったのかもしれない。それは男が死にたくなった時にだけ女に会いに秋津温泉を訪れて元気になって帰る姿と重なる。男が日本の復興の象徴だとすると女は戦前の日本か。あれほど死を嘲笑していた女がいつの間にか時代から取り残されて呆然としている姿は悲しくも痛々しい。かといって男の堕落した姿を見れば日本の復興が必ずしも良かったとも思えず、なんとも言えない複雑な気分にさせられる。
とにかく林光の音楽が美しい。やや過剰とも思えるがこの曲なら許せる。ちょっとしたシーンにも俯瞰を入れたりして手間隙を惜しまない成島東一郎のカメラワークも素晴らしい。60年代の程よく退色したカラーフィルムって、本当にいいなあと思う。
難点を言えば長門裕之に17年も美人女将をつなぎ止める要素が欲しい。成瀬映画に出てくるダメ男が持ち合わせる男の妖しい魅力のようなものがあればなあと。
ちなみに松田優作もこう言ってる。 「この前テレビで『秋津温泉』やりましたね。前に見たときは、かったるくて、つまんねえなと思ったんだけど、いや、すごかったなあ。岡田茉莉子さんはすごかったですけどね、主演の男の人がね・・・ぜんぜんわかってないね。あの世界に入れない人だ、あの人は。自分もだけどね」
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