[コメント] U・ボート(1981/独)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
○ 艦内の詳述がいい。戦争映画でこれほどの規模はちょっと記憶にない。金かけただけのことがある。エンジンが動いて感動するのも、前半の描写あってのこと。長い映画(ディレクターズ・カット版で鑑賞)だが、描写が面白くて飽きることがなかった。
○ 一方、船外の模型はチャチでいけないが、どうでもいいように思われる。兵隊たちは艦外や海底を見ることはできないのだから。いっそのこと全部省いて主観描写だけにしたほうがいいようにも思うが、多分やり過ぎになるのだろう。
○ 『ポセイドン・アドベンチャー』他、パニックものに付きものの、主人公に反対ばかりする類の悪役が出てこない。ハリウッド映画との違いはここにある。なぜって、全員「悪役」だから。登場人物はそれを知らないが、観客は全員それを知っている。戦勝国の論理は戦争に正義を見出し、足引っ張るやつは総否定、在郷軍人会が結成され圧力団体となり、原爆も何も全部OKとなる。本作の厭戦のリアルさは大人だ。倫理とは敗北を経ねば立ち現れないものなのだろうか。
○ 急転直下のラストにリアリティがあるのはそのためだ。Uボートは沈没しなくてはならない。
○ ヒトラーの扱いは黙殺に近い。「少年十字軍」の面々にとって、これは真実だったのだろうか。戦争映画でいつも残る疑問。
○ 艦が海底に没して、どちらも絶望的と見えるなか、兵隊たちは諦めた奴をぶん殴りながら艦の修復に奔走し、衛生兵は撃たれた者を必死で看病する。ここは心に残った。この並列は説得的だ。医者が病人を最後まで助けようとするのは何故か、いろんな意味でよく判る。
○ 沈めたタンカーにとどめの一撃を発射するのは、本作で唯一納得できない。そんな無駄なことをする必要はないだろう。だいたい魚雷がもったいない。ただタンカー搭乗員の描写をしたいがための詭弁に見える。
○ 最初の駆逐艦を見失う件はじめ、艦長は失敗を連発している。
○ あと、機関長の奥さんの出産はどうなったのだろう。
○ 素晴らしいのはテーマ曲。映画では(たしか)潜水艦が海上に浮上したときだけ使われている。公開当時、AMラジオでよく流れていたものだ。映画音楽が一般の番組でかかるのは異例で、この当時、他は『未知との遭遇』と『レイダース』ぐらいしか記憶にない。久石のつくるジブリ映画のテーマと酷似しており、あれはパクリだと思っている。
いま突然思い出したが、私の父は太平洋戦争の潜水艦乗りだった(出撃はしていないらしい)。これを無意識に覚えていて、他人事と思えなかったのかも知れない。
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