[コメント] いぬ(1963/仏=伊)
ジャン=ピエール・メルヴィルこそフランス映画史上最も発砲の演出に頭を使った監督かもしれない。メルヴィル以上の発砲を見せてくれる監督はアメリカにさえ数えるほどしかいないのではないか。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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発砲に関してだけ云ってもやはりラストシーンが傑出しているわけだが、それ以外のシーンの発砲においても唐突さと簡潔さ、そして秀抜な音響設計を確認できる。さらに銃口のアップのように厭らしさを感じさせない程度にケレン味のあるカットも。
この映画において驚くべきは、その発砲をはじめとして凝りすぎと云ってもよい技巧が映画の面白さをまったく損なわせていないことだろう。最高度に美しいモノクローム。流麗かつ力強いカメラワーク。それ自体は突出を感じさせず、もっぱら芝居の緊張感に貢献する長廻し。フラッシュバックやスクリーン・プロセスさえも映画のテンションの持続を阻害せず、むしろ格好よさに転じている。また雨の降らせ方、鏡や帽子の使い方も唸るしかないし、そもそもハードボイルドなプロット展開から微量だが濃厚なセンチメンタリズムを立ち上らせてしまう作劇・演出が脚本家兼監督としてのメルヴィルの力量の高さを示している。
最後になってしまったが、ジャン=ポール・ベルモンドやセルジュ・レジアニらの好演もこの映画の成功に与っていることはもちろん云うまでもない。
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