[コメント] イースター・パレード(1948/米)
どこを切っても名作。どこから切り出したらいいかわからない。言うまでもなくフレッド・アステアも素晴らしい。特にガーランドと二人でルンペンの格好をして歌い踊るシーン。優雅の権化みたいなアステアが、乞食を演じるギャップ、そのおかしみ。念のため言い添えておくと、RKO時代のアステアをこよなく愛す私の友人は、こんなのはジーン・ケリーに演らせればいいと文句を言っていた。彼の気持ちもなんとなくわかる、というか思わず笑ってしまったが、優雅というなら初めの方でアン・ミラーとアステアが踊る短いシーンが十二分に優雅だ。部屋の中で踊りながら、アステアが(得意の)テラスへミラーを誘導しようとすると、それを嫌気したミラーが寒がる素振りをする、すると彼女の気持ちを先読みしたアステアが、テラスへの扉を閉めて部屋の中で踊りを続けようとする。二人の男女の感情の遣り取りが見事にダンスで表現されていて、しかも上品なのだ。この優雅さはミラーならではだ。ガーランドにはコケットリーがあるし、エネルギッシュも簡単に表現するが、エレガンスがない。これだけでも、つまり後のタップ・シーンがなかったとしても、アン・ミラーが出演した意味がある。むろんタップ・シーンも凄いんだけど。
MGMミュージカルのもう一つ(だけではないかも)の頂点、『雨に唄えば』と比べるとわかりやすいが、『イースター・パレード』はテンポがすこぶるいい。逆に言うと、『イーパレ』を見た後に見ると、『雨唄』は冗長に見えた。ダンス・シーンはこれでもかというくらい徹底して見せるし、物語もわりと生真面目に紡いでいく。それと比べると『イーパレ』は、物語はトコトコ進むし、楽曲は「もっと見ていたい聞いていたい」という物足りなさをあとに残しながら次々に展開する。端的に言って、『イーパレ』の方が一つの映画作品としては完成度が高いと思う。しかしミュージカル映画ファンなら『雨唄』のダンス・シーンにより満足を覚えると言えよう。要は両作とも大好きな私がそう区分けしているということだけど。
90/100(07/05/13記)
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