[コメント] デッドマン・ウォーキング(1995/米)
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はじめに言っておきますが、自分は死刑の犯罪抑止効果には懐疑的です。んで、どちらかというと死刑制度廃止派です。死刑の残虐性云々からではなく、冤罪の可能性を完全に否定することはできないと思うから。
そんな自分がこの映画を観て「やっぱり死刑はあった方がいいかな」と思ったんだから、本作はやはりニュートラルな立場を貫いたと言っていいんじゃないかと思う。一方で、死刑廃止論者であることを公言して憚らないティム・ロビンス夫妻が、こんなどっちつかずの映画を作ったことの意図がよくわからないという意見にも賛同する。
この映画に欠落しているのは、死刑を免れたという主犯格(ショーン・ペンの共犯)の男を糾弾する視座ではないかと思う。被害者家族だって、ほぼ死刑が確定しているショーン・ペンよりも主犯への憎しみの方がより強いはず。なのに、それがまったく前面に出てこないから、どこか腑に落ちないものが残ってしまう。
と、ここまで書いといて何ですが、自分は、このどっちつかずのへんてこりんな映画、けっこう興味深く観ました。まるで、サランドンをインタビュアーにしたドキュメンタリーを観ているかのような不思議な感覚に耽ることができたから。基本的に1対1或いは1対2のダイアログを重ねて展開されていくけど、その一つ一つの場面での各役者の心理表現が繊細で、濃厚で、とてもリアル。被害者家族に思いがけず(というか軽率なんだけど)糾弾されてどぎまぎするサランドンなんて、なかなか真に迫っていた。そして、ペン。前半の憎憎しさと異常性の表現は特筆もの。あれがあったからこそ、自分も死刑存続派に傾いちゃったのかも。
世の中には死に値する非道な人間が確かに存在するとは思う。ただ、それを冷静に裁くだけの能力が人間に備わっているかどうか、こちらにもちょっと自信が持てないんだよな・・・
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