[コメント] ベルリン・天使の詩(1987/独=仏)
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ピーター・フォーク!私にとっては、コロンボというよりも『こわれゆく女』での父親である彼が元天使であったというくだりには納得。不器用な彼の微笑みは天使のまなざしに近いのかもしれない。現実と架空の世界をごっちゃにしてしまうような設定は反則といえば反則だが、そのための担保として本作には【Comedy】の分類が付されている(のだろうか)。
天使であること。ただ見守るだけで、直接人の心に働きかけることができない彼らは、それでも苦しむ人びとに思いを伝えようと側に寄り添い、必死で念じる。それは通じたかと思えるときもあるし、まったく通じないときもある。それは人間と人間とのあいだの、どうしようもないがそれでもかけがえのない関係を示唆しているようにも思えた。
とはいえ、人の本当の苦しみはやはりその人でなければわかることはできない。天使たちは数えきれないぐらい多くの人の悲しみや苦しみを目の当たりにし、それらを思いやってきたが、それはあくまで他者の苦しみであり自分の苦しみではない、それこそが彼ら天使たちの苦しみ。一人の天使は人間になることで愛する人と苦しみをわかちあおうとする。人間としての苦しみを体験したことのない天使は、いくら見かけがおっさんでも人間では赤子のようなもの、彼に与えられたあの鎧は始まったばかりの生に重みを持たせようとしたせめてもの配慮だったのではないか。(だからこそ「売るのかよ!」と観ながら少しつっこんでしまったが…)
ベルリンの空にかつて天使がいた。あまりにも感傷的で脆い作品だが、重厚な画作りにはかなりの説得力がある。それにしても、楽しいことをやっているはずなのに、サーカスというものはどうしてああも悲しげな感じがするのだろうか。
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