[コメント] 男はつらいよ 寅次郎と殿様(1977/日)
これこそ人情。高橋留美子がこの映画を見たかどうかは知らないが、まぎれもなく「めぞん一刻」の原型はここにある。
殿様であれなんであれ、人の親が、なさぬ仲になった死んだ息子の妻と、息子の想い出を語りあいたいと泣かれて、心動かぬことがあろうか。それが可能か不可能か、なんてこの際どうでもいい、そうやって泣いて語りあいたいと思うのは当たり前だし、できることならその力になってやりたい、これが人情というものではないだろうか。
嵐寛寿郎のいかにもという演技は、こういう人情を描いてこそズバリと真髄を発揮する。それを見抜いた山田洋次監督の眼力には恐れ入る。オープニングの夢のシーンで寛寿郎の代名詞・鞍馬天狗をもってくるヨイショも良いが、その寛寿郎の持ち味をいかし切った映画ではないだろうか。
後は余談だが、この映画、間違いなく自分は映画館で見たことがある。寅次郎が殿様の屋敷で股の手ぬぐいで顔を拭いたという話は見た覚えがある。1977年8月の公開で同時上映はおそらく「坊ちゃん」らしい。具体的な記憶はほとんどないのだが、間違いなくこのシーンに覚えがあるのだ。
30年の年月を経て、寛寿郎も寅さんも鬼籍の人となったが鮮やかに記憶がよみがえってきた。こういうことも映画の楽しみの一つであるなあ。
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