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[コメント] 男はつらいよ 寅次郎と殿様(1977/日)

アラカンのバカ殿は明治天皇のパロディだろう。すごいブラック。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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明らかに改善されたのは前作の寅屋の面々が善人で寅が悪人、という詰まらない図式。例えば拾ってきた犬をトラと呼ぶギャグがいい。どんな理由があろうがこれは潜在的なうっぷん晴らしなのであり、本作の寅屋の面々は人間臭く、喜劇が発動している。真野響子の雲をつかむような捜索においても、警察に尋ねろ位の提案ができない寅屋の面々は寅と同レベル。一家でドタバタをやっているというニュアンスが気持ちいい。

その延長に嵐寛寿郎の殿様喜劇が無理なく展開されている。アラカンが喜劇を演じた例があるのか不勉強にして知らないが、本作の造形から当然思い当たるのは新東宝の明治天皇や神武天皇であり、このバカ殿はどう見てもこのパロディだ。山田洋次は密かにこれを狙っているに違いなく、悪い人だと思った。老アラカンはここでも背中に人情味漂い、東京には一度参勤交代で来たことがあるというギャグが素晴らしい。東宝の三木のり平と寅との絡みは本作が多分唯一で、文化遺産級(そういえば、寅がよく使う「パァーツといきましょう」は元は三木のギャグですね)。

真野の薄化粧と安物のワンピースは、彼女のバブリーなイメージとは正反対で好感度高い。本作のマドンナはこういう発見があるのがいい。彼女の件は定番を出ないが、クライマックスでアラカンの二つの依頼の、片方だけを告げるさくらの件が巧い。巧い脚本とはこういうものだろう。技術がそのまま、さくらの優しさを際立たせている。ベストショットは抽象画のような味のある、アラカンと真野が寄り添い去って行く夕方の土手の件。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ けにろん[*]

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