[コメント] 男はつらいよ 噂の寅次郎(1978/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
僕もコンニャク(今昔)物語でも読んで勉強した方がいいみたいです。
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大原麗子さんは綺麗だ。おいちゃんとタコ社長の台詞にもあったが、美人だし、色っぽい。普通に考えて、こんな草だんご屋に働いているわけがない。ただ、これもおばちゃんかさくらの台詞にあったが、彼女の場合はどこか「訳あり」感が漂う。この訳あり感がいいのだ。こんな団子屋で働いているわけないんだけど、でもだからこそ、なんか訳があるんだろうなと思わされる。大原麗子という女優を見出だし、連れてきたことが本作の突き抜けたところではないか。僕なんかには、ここまで「死による別れ」「世間知らずの殿様」「社業(SKDの宣伝)」と3作続いたネタ詰まり感を、ようやく突破したようにみえました。いや〜、よく頑張った、みたいな。
一方で、離婚によって経済的な自立を迫られた女性が働く場として、草だんご屋を選ぶものかなという違和感は残ります。
さらに言うと、大原に惚れる室田日出男、母同士が姉妹のいとこであるという設定はやや気色悪い。もう少し遠目の親戚か、義理のいとこぐらいの設定で充分だったのではないか。彼自身は、恋愛感情を伝えるのが苦手な朴訥青年を好演していましたが。
☆ ☆ ☆
寅をいい人だと信頼するが、恋愛対象としてはまったく考えない。相手方のそんな心情に気づかされた寅が身を引くというのを『男はつらいよ』のパターンAだとすると、相手方にも寅への好意があるのに、寅がなんらかの事情で自ら遠慮するという本作のようなバージョンはパターンB。本作では、室田の方を、自分より大原にふさわしい相手だと、寅が自ら判断したという感じか。従兄である点は別として、年齢のバランスや甲斐性(故郷・小樽で就いた職は映画内で明かされないが、もともと高校教員の免状を持つ)の面で、確かに室田の方が優っている(寅より劣るキャラクターも設定しづらいだろうが)。寅のこの性格(?)は、美点とか長所とか言えるものではないと思う。しかし、この歯痒さが、寅さんをシリーズとして続けさせる必要十分要素なのだから、致し方ないところなのだろう(受容)。
80/100(19/03/16見)
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