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[コメント] MEMORIES(1995/日)

「表層的」「こぢんまり」などの否定的評もうなずけるが、かといって長くすると大友は必ず破綻する。破壊描写になると俄然冴えるのも逆にみっともない感があり、突き抜けないもどかしさは否定出来ないが、美点は結構ある。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







<第一話> ★2

あまり面白くない。現実が記憶と「電子化された思念」に侵食される過程の描写が甘く、観る者を置き去りにするからだろう。スリラー演出がかなり拙い。船員が4人もいるのだから、もっと4者4様に混乱した状況を絡ませたい。特に早々に「彼女」の思念に呑み込まれるミゲルという若造の描写がいらつく。宇宙ゴミ処理船がなぜあんな巨砲を装備しているのかもよく分からないが、発射音が無音だったり、炸裂時の演出などはいいと思う。

<第二話> ★4

面白い。主人公が良かれと活躍すればするほど世界が滅亡に近づくという黒い笑いの作りは『博士の異常な愛情』の古典を踏まえてもいて、「たかが一人に!(一機に!)」と焦りまくりいつしか殺人が正義に転換する作戦室と状況のエスカレーションには黒く明快な面白さがある。「届かない声」といったモチーフにも共通項を見いだすことができる。

犠牲者がにやけた顔で状況をあざ笑うように死んでいる、またバカげた滅亡の風景に快哉を叫ぶように咲き乱れる花々という倒錯も味わい深い描写だ。状況をわきまえない「英雄」ほどタチの悪いものはないという諧謔。宿主が恐れれば恐れるほど発散する毒が増すという設定も見逃せない。つまり、ある特定時期のアメリカ等を思い浮かべればよい。

戦車隊や戦闘機による破壊描写における笑い。大友の初期短編集などを読むと、鬱屈した破壊衝動の発散法や矛先を誤ったり空振ったりするときに醸される乾いた笑いに美点を見いだすことができるのだが、その美点を改めて確認させられる。じいちゃんばあちゃんの描写がいきいきしているのも大友らしい。楽曲も意図のツボをうまく押さえている。ただ、画がかなり薄っぺらくて安いのが残念。

<第三話> ★4

「敵」を想定することで初めて統制される、逆に言えば、「敵」を想定しなければ体制を維持できない国家の形をよく描いている。そして、その「敵」とは幻想に過ぎないことがままあると無言で語る砂漠、幻想を幻想と気づかず無邪気に憧れる少年(歴史の繰り返し)、「システム」の催眠作用など、切実な戦争寓話と解釈できる。これらが説明的台詞を極力排し、蒸気と機械群の轟音の狂騒で描かれる演出は非常に要領が良く好感度大。寓話としてそつがないが、理屈が展開をがんじがらめにしており、そつがなさ過ぎて拡がりにかけるのが欠点。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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