[コメント] ゴッドファーザー(1972/米)
私にとってこの映画の物語は、(展開が)美しいというには程遠かった。それゆえに見える物語の価値観も、率直に言って感心しかねる。ここにこの映画を私が高く評価できない理由があるのだが・・・。以下、前回書いたコメント&レビューを加筆・訂正し収録。(05/01/08再見...劇場では初見)
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<コメント>
これがマフィアをリアルに描いた映画だとすれば、マフィアってもんを軽蔑する。まったくのフィクションだとするなら、単なる駄目映画だ。ある程度リアルだと思えたので、この点。
<レビュー>
洗礼式の合い間に挟むことによって、殺戮シーンになぜか神聖なイメージを与えることに成功した。この点から考えても、”マイケル”アル・パチーノの表情に、映画の初めと終りでよく見りゃ何の変化もないので、どことなく神々しさが加わって見えるのは、演出の力だろう、演技力と言うよりは。
家族ってのは一緒に飯を食う仲間のことであって、血統はそれを支えるフィクションの一つにすぎない。DNAは遺伝子と言われるけれど、骨格や容貌を左右することはあっても、われわれの行動や思考様式を規定しない。われわれが先代から受け継ぎ次世代に引き継ぐのは文化であって、日本のヤクザが親分・子分と言い、実の親子とは無関係であることが逆説的に証明しているのは、血統が想像力の産物であることだ。女は、血統のフィクションを必要とする度合いが男より低い。
アングロ・サクソンは新世界に王侯・貴族制度を持ち込まなかった。すなわち歴史や文化を捨ててきた。その代わり彼らを結び付けたものは、自由や合理性という誰もが共有できる価値観だった。だが、それだけで足りるはずがない。心の底では血統のフィクションを必要としており(それは口が裂けても言えないのだが)、それがイタリア系移民が持ち込んだものへの賛美として表れた(この映画は、個人主義との繋げ方が上手かったのだ)。女は、男ほどこれを賛美していないはずである。日本人にとっては都市化と核家族化と少子化が進む中で受け入れられた物語であったが、実はわれわれはもっと素晴らしいものを持っている。なにもこの程度の映画を賛美するにあたらない。任侠映画の1本も観てちょーだい。
75/100(03/08/06記)
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