[コメント] 誘拐(1997/日)
森下直の脚本は城戸賞入選という以上の完璧な出来!素晴らしいなんてぇもんじゃぁない。
大河内監督はシンデララボーイ的な経歴と、平成ゴジラシーリーズの不評などで内外から総スカンを喰ってるようだが、周囲のサポートもあるだろうし、技術的に特に問題があると感じたことは無い。むしろ彼のデビュー作『超能力少女REIKO』を見てそのテンポの良さに歓心したくらいだ。
肉体派木村大作キャメラマンの画もいい。大掛かりな望遠ショットばかりでなく、スラっと足を長く見せるフルショット、産廃車荷台の見上げショット、キューピー人形からの引きのショット、ラストの富士五湖(アレは何湖?)の非現実な色彩など驚かされる箇所が幾つもあった。
服部隆之氏の音楽は格調高く、大作映画に付き纏う大袈裟さ、胡散臭さを余り感じさせない。
役者ではなんといっても酒井美紀。そして柄本明。長瀬はひたすら的確。渡哲也は悪いとまで云わないが、人情に流され過ぎたきらいがあるし、喀血演技はオーバーだ。
さて森下の脚本であるが、もうこれは単なる映画脚本のレベルを超えている。松本清張に連なる骨太な社会性。小心で狭量なハリウッドでは映画化は不可能。犯罪トリックも実に本格的。渡が金を摩り替えたであろうことは長瀬とほぼ同時に気づくことが出来たのだが、冒頭の何気ない台詞の一つ一つが複線として意味を持っているとはまったくしてやられたりだ。長瀬が排水溝を覗き込むシーンでポーンと突き放され心地よい敗北感を味わった。
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