[コメント] 青幻記・遠い日の母は美しく(1973/日)
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一色次郎(*1)による太宰治賞の同名自伝小説の映画。
原作によると主人公は47歳で、親の法事をするため工場の退職金をそっくり旅費にして故郷を36年ぶりに訪問するという設定だが、 実際は著者が20歳の時に島を訪れた時に記した日記を基にしており、50にもなってあのような純情な感情は沸かないだろうと「古里日記」に書いている。
一色氏の父は集団暴行(八合事件*2)の罪で鹿児島刑務所に服役し、結核で獄死(享年22歳)。母は一色氏が三歳の時に追い出されるように 婚家を去り、亡くなった後は曾祖母に育てられる。その後上京し作家になり、父の無実を晴らすために「太陽と鎖」を書いた。 「太陽と鎖」が父の小説であるなら、「青幻記」は母の小説といえよう。
岩場で魚を麻痺させるのに使用したのはイジュ草とデリスのヒゲという根毛で、この二種類の植物の汁はDDT作用を起こすらしい。 戦後は青酸カリを流して漁業をしたためサンゴ礁が破壊された。青酸カリの販売先の9割は南西諸島だと言う人もいるほど。
「古里日記」に「珊瑚礁は腔腸動物の死骸の累積である。つまり石の島であり、死の島である。」という印象的な文があるが、 沖永良部島はまさにあのラストシーンに相応しい舞台であろう。
*1 一色次郎…本名は大屋典一で、「一色」は少年時代に一年ぐらい住んだ兵庫県一色村から取り、「次郎」はあらゆる事業に失敗した祖父から取る。
*2 八合事件…島の青年団と暴力団の抗争事件で、暴力団側の八合次郎が死亡したことから青年団側から9人も投獄され2年〜3年という重い実刑を受けた。
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