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[コメント] 砂の器(1974/日)

丹波哲郎が全国を行脚して執念の捜査を続ける物語の大半は刑事ドラマだが、「宿命」の演奏が始まってからは一大感動巨編に変貌。四季折々の美しい日本の原風景をバックに「宿命」が鳴り響く怒涛の回想シーンは映像と音楽のシンクロが完璧。
パピヨン

**ネタバレ注意**
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午前十時の映画祭で十数年振りに再見。初見はVHSだった。もう回想シーンで強烈に心に焼きついたのは覚えてる。

決して出来のいいものでない原作を大胆にカットして殺人の動機−宿命を描くことに注力した橋本忍と山田洋次の脚本が見事。物語の大半は「宿命」への助走に過ぎない。真相究明、回想と演奏を自在に組み合わせたクライマックスの構成がとにかく素晴らしい。

放浪シーンはロケーションや天候、構図が完璧過ぎて凄い。雪の中で海辺を歩き、夕焼けを背景に橋を歩く、山間の山村で田んぼ道を歩く。どれも心に焼き付く。ここまで来ると話を引っ張ってきた丹波哲郎も狂言回しになって加藤剛と加藤嘉の父と子のドラマになっている。以前観たときは駅での別れで泣いたが今回は丹波哲郎が加藤嘉と会い、その後手紙を紹介する際に息子のことをずっと気にかけていたことに触れるが、そこで泣いてしまった。事情があるにせよ和賀英良は酷い奴なので子を思う父の心情の方がグッときた。丹波哲郎も加藤嘉もいい芝居するんだよなぁ。

「大俳優 丹波哲郎」より ―『砂の器』のクライマックスで、丹波さんの長台詞があって、妙な間がありましたけど…。 「あれはね、忘れたんじゃない。俺は十篇くらいやり直したけどね。最初は野村監督は、俺が忘れてんのかと思ってんだよ。でも、途中で呼吸できなくなるんだ。自分で感動し過ぎているんだね」

(評価:★4)

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