コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 青春の蹉跌(1974/日)

最後の音にゲンナリ。桃井かおりに引き込まれて、真剣に観てたのに、「え?ギャグ?」って感じ。
Shrewd Fellow

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







いったい、最後の「ゴキッ」のシーンにどれだけの意味があったのでしょうか。原作と違う結末が悪いとは全然思わないけど、ずいぶんと中途半端な終わり方だったように感じました。ケンイチロウのキャラクターがいまいちくっきりと伝わってこなかったので、彼が非常な野心家でお嬢様に近づいたのか、それともお金持ちのお嬢様がどうやら自分に気があるらしいことを気づいてから野心家になったのかも不明。大学を卒業するまえに司法試験に合格するほどのアタマの持ち主らしからぬ、行き当たりばったりな将来設計。周到に計画を立てていなくては、野心家などというものは成功しないのではないかしら。ま、でもきっと、そんな甘い計画だから「青春の蹉跌」という名前なのかもしれないけど。だいたい、殺す前に中出しするなんて信じられない!どういう野心家なんだ!

それにひきかえ、桃井かおりのキャラはわかりやすかったですね。そして、桃井かおりがまたうまい!こういう役、ほんっとに合ってる。「私のカラダが目的だったの?」、「今すぐ結婚してとは言わないわ」、「別れてあげようと思ったのに!」等々、思わず吹き出すセリフの連続。だいたい、ケンイチロウより彼女のほうがよっぽど野心家だったんじゃないかしら。将来、リッチになりそうな方を父親に選んだんだから。(彼女自身、誰の子供かわからなくて、どうせならリッチになりそうな方に結婚をせまったほうがいいと思ったのかもしれません。)彼女のスゴイところは、裸でケンイチロウを待っていたくせに「私のカラダが目的だったの?」などと平気で言ってしまうところです。このころって、初体験が近づいている女の子はみんなこの件について不安を抱いていたものです。今から思うと笑えます。だって、女の子だってセックスについて興味津々なんだもの。女の子はいつだって、「彼がどうしてもっていうから・・・」と被害者になりたがる。自分がしたかったなどとは絶対認めない生き物だった。ずいぶん、変わったものですね。いまどき、「私のカラダが目的だったの?」なんて悩む子がいるのかな。エンコーなんていう言葉が普通に高校生の口からでてくるような時代に。「俺の金が目的だったの?」と逆に責められているんじゃないのかな。そのうち、ストーカー(奥さんがいたりする)に刺されたりする。この映画とはまったく反対の立場になっちゃってるっていうのが、笑えます。

余談

この映画とはまったく関係ありませんが、今でも結婚のことを「永久就職」と呼ぶオヤジがいることからもわかるように、女は結婚しないと生きていけない時代がありました。この映画もそんな時代に作られているのでしょう。でも、赤座美代子のキャラは、変わりつつあった女の生き方をあらわしているように思えました。妊娠したから結婚をせまる女と、子供を産むことを決めた自分の人生を自分で責任をもとうとする女。赤座美代子のキャラが光ってました。また、「誰の子供かわからない」状況に陥った、というシチュエーションでピンとくるもの、といえば『もう頬づえはつかない』のマリコですが、マリコは誰にも責任を転嫁しないで自分で自分のしたことの責任をとることを選びました。(たった5年でこの変化!)ラストシーン、一歩踏み出したマリコの向こうで風にゆれるレースのカーテンが、変わりつづける女の生き方をあらわしているように感じたものです。颯爽と、自信をもって、前進あるのみ!今日も、自分で自分をホメつつ、仕事に励む私。コドモのためではなく、自分のために生きている。そう思える毎日にしたいものだ。

(注)誤解をうけそうなので。結婚そのものを否定するものではありませんし、百恵ちゃんのような専業主婦の方に対して「結婚していないと生きていけない人」などと中傷するものでもありません。私のまわりでは、すばらしい結婚をして幸せに毎日を送っている人がたくさんいます。主婦の人もいるし、仕事をもっている人もいます。とても、うらやましいと思います。ただ、中には「食べていけないから」という理由で不幸な結婚にしがみついている人がいることもまた事実なのです。一生、働かなくても食べていけるというだけのつながりではなく、一緒にいて楽しいから、という単純で明快な関係であってほしいと思っているのです。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)TOMIMORI[*] たかやまひろふみ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。