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[コメント] ある映画監督の生涯―溝口健二の記録(1975/日)

田中絹代さんの女優以外の顔が、女優である時の彼女となんら変わらないという事に驚愕しました。演技をしている田中さんは、演技という枠を超えてスクリーンにいたんだと痛感します。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







銀幕の中でしか見た事のない大女優たちが、普通に洋服を着て、普通の言葉を喋り、しかもその内容が溝口健二についてであるというだけで相当興奮する。本当のところ、最初の20分くらいまで、こりゃ150分ヤバいかも・・・と思っていたのですが、入江たか子さんが出てきたあたりからもう止まりませんでした。熱量を保ったまま最後まで見せきる勢いがあったと思います。

ただし、見ていてどことなく嫌な空気を感じたのも確か。冒頭の、病院にズカズカ入っていくところからして不穏な空気はありましたが、この監督は少し乱暴すぎると思いました。そもそもインタビューしている相手の話の腰を折って自分の話をし出すってのがイライラする。これを観るほとんどの人が、溝口健二という監督は知っていても溝口健二という人間は知らない訳で、どういうエピソードを観客が欲しているか、そういう部分をあまり考えていない雰囲気が気になりました。もっとインタビューされている人の話を聞きたいのに!!っていうフラストレーションを感じてしまいました。

それから特筆すべきは田中絹代さんへのインタビューですよね、やはり。初めて田中さんの女優以外の顔を見られた事はなんだか嬉しいし、それ以上に女優以外の顔が、女優である時の田中さんとなんら変わらないという事にも驚愕しました。演技をしている田中さんは、演技という枠を超えてスクリーンにいたんだと痛感します。けれども彼女へのインタビューは、それまで以上に強引で乱暴に感じました。田中さんをあの場に踏ん張らせたものは、溝口への敬意のみだと私は思いました。私は彼女の仰っていた事がものすごく解ったし、彼女の言葉だけで充分でした。言葉を選び、美しい日本語で話す田中さんは凛としてとても美しかったです。だからこそ監督の品のない誘導尋問には辟易しました。

またラストのガソリンスタンドのくだりも、だからどうしたとイラっときます。コレまでの流れからして、そこに哀愁なんてものは感じられなかったし、溝口監督への愛も感じられませんでした。

この評価点数は、作品のインタビューに答えられた全ての方へ敬意を表して。

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09.06.25記(09.06.25DVD鑑賞)

(評価:★3)

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