コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ポストマン(1997/米)

SFという免罪符が小説では通用しても映画では通用し辛い難しさ。
BRAVO30000W!

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この作品が総スカン気味なのはひとえにケビン・コスナーが有名俳優になってから監督作品として作ってしまったところに敗因があると思う。

敗因、と言いきるのも可哀相だが。長時間作品の割には展開が緩やかだったり急だったり、SFなのにガジェットが少なくてぱっと見SFっぽくなかったり、主人公は世紀末救世主っぽくないし、濡れ場は中途半端だし、最後は最後だし、と色々言われるが、それは逆を言えば「お約束」を期待しすぎている感がなくもない。それも無名の監督・俳優その他で作ればこうまで叩かれもしないのだろうが、なまじ有名になってしまった人々が作ってしまったからラジー賞まで採ってしまうのだと個人的には思う。

技術的な点はさておき(と言っても結構細かいところで凝った特撮は施しているのだが)、アンチヒーロー的な人間が無目的に生活していく中で、結果的に社会に翻弄されながらも目的を持って未来に向かって前向きに生きる、という物語でここまで話題に上る作品も少ないと思う。見た目があぁだけど、ケビン演じる主人公は正に現代人の象徴のように思える。で、これが大戦後でなかったら、ケビンもただブラブラと役者稼業で生活していたのだろうけど、時代が時代なだけにそういうわけにはいかなくなった。というところにこの作品のテーマがあるように思える。

また、敵の大戦前の職業のエピソードなど、出世欲の象徴みたいに見せていてわかりやすい。やや登場人物がステレオタイプ的なキャラクターになりがちだが、ある種の「それぞれの人間代表」的なキャラクター配置をさせていて、物語としては丁寧だと思う。

こういう物語はSFにすることによって多少誇張しても「SFだから」で済むのだが、小説と違って映画は具体的に映像化させてしまうだけに、物語としての免罪符は通用してもヴィジュアルが容認されないことがあって、こういう作品の映画化はとても難しいと思う。確かに良い話だから映画化したいというのもわかるけど。

まぁ、そんなに目くじらたてるほどつまらなくはなかったです。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)ダリア[*] G31[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。