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[コメント] アルジェの戦い(1965/伊=アルジェリア)

解放戦線の誕生から宗主国政府との戦い、民衆蜂起までを再現で描く。日本人には馴染みのない(?)世界だが、真実に迫った描写で理解し易い。
死ぬまでシネマ

植民地を支配する側は時には苛烈に弾圧し、時には解放戦線と民衆との引き離しを画策する。われわれには暴力的手段が異常に思えてならないが、彼らに対し「平和的に服従しろ」と言う事が如何に非人間的かという事が否応にも突きつけられてくる。命を代償に戦うというだけの理由は何だろうか。それだけの理由が彼らにあるのか、それとも彼らは無駄な事に血を流しているのか。

現在日本の市民は一見平和的に見える。殺人や戦争は忌避されている。しかし国内ではしばしばヒステリックな個人(集中)攻撃がおき、外国への愛国主義的な反発も起き易くなっている。それらに対して冷静を促す論調も見られるが、それですら教条的で表面的に見える事も多い。マニュアル主義やランキング偏重の世情に伴って、物事への理解や洞察が浅薄になっているのではないだろうか。こんな平和は非常に脆弱だと思う。

われわれは往々にして表面をなぞって「解ったつもり」になりがちだ。「分析」は理解ではなくその手助けに過ぎないのに。遠くの出来事や想いを真に理解するのは難しいし、目の前に居る人間の事ですら「それはこういう事」と安易に断定しがちだ。相手を理解する力を養わなければならないと思う。その努力をしなくなれば、ひとは自分自身の暗い穴の中に落ちて行ってしまう。今年('08年)に入ってからこの国に頻発している「ただ殺す為の殺人」を視るにつけ、尚更そう思うのだ。

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