[コメント] 戦争と平和(1968/露)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画はとにかく凄い。当時のソ連の国家プロジェクトして製作されただけに、総上映時間は427分に及び、映画に登場する人間の数は膨大な数に上る。人海戦術と制作費。これを可能としたのはソ連という国家の後ろ盾あってのことで、断言するが、これ程の規模の映画は後にも先にも存在しない(もし未来にそんな映画が出たとしたら、きっと超国家が誕生した時だろう)。
とにかくこの作品、呆れるばかりに人が出てくる。戦いのシーンは兎も角、ダンスのシーンをとって見ても、よくぞこれだけの人を集めたと感心するやら、呆れるやら。
尤も、何せ元が良いだけに、単に「人ばかり使った駄作」ではないのが救いか。元の小説版を可能な限り忠実に映像化しようとした努力は評価できるし、派手な部分だけでなく、静かな部分でもしっかり作り込まれている。その辺のカメラ・ワークが非常に面白い。画面を分断してそれぞれ独自に台詞を言わせ、あたかも遠く離れたところでお互い会話しているかのような、面白い演出がなされていたり、緊迫感のある場面ではフラッシュが多用され、メリハリを出していたり、色々工夫されている。
「平和」の部分で用いられるカメラワークに対し、戦闘シーンではそんな手段は使わず、ひたすらダイナミックに「戦い」を描いているが、これも凄く、人や馬、爆薬がふんだんに使われ、これだけで充分な演出になっている程。
ところでこの当時のソ連の状況を考えると、冷戦下、国家主義を非常に強く打ち出していた時期に当たる。しかもこれが制作された当時はチェコ動乱のまっただ中…(『存在の耐えられない軽さ』参照)。国家プロジェクトとして作られたこの作品は当然その影響をモロに受けることになる。特に3部とか4部になると、そう言う部分が結構鼻につくようになってくる。「暴虐なフランスに蹂躙されながら、国家として蘇ったロシア」みたいな部分が強く出てるのだが、これは元々トルストイの打ち出したイメージとは全く逆の方向性。
後、キャラクターの独白と普通の台詞と場面の説明がごっちゃになってるため、結構判断が付きにくいとか、細かい所で損してる作品でもあるな。どうでも良いけど、ちょっとキャラクターもイメージと違ったし。
やっぱりトータルで見て、5点は上げにくいな。
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